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星の墓場

星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ

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黄金三角形:11(ミロ視点)

 カミュ視点が難しくて、書いたり消したりしている間に、先にミロ視点を途中までφ(`д´)カキカキしていたので、今回は珍しくいつもより早いです(´∀`)♪
 でもまたしても見直ししてない;
 しかしもう寝ないと明日の仕事に差し支えるので、おかしなところは後でこそ~り直します(;^ω^)
 毎回スミマセン(爆)

 そして皆様、コメントありがとうございます(T-T)
 語彙が足りなくて同じような文章ばかりになってしまい、すぐどん詰まって嫌になってしまうのですが、コメントに励まされながら何とか進められました。
 次回もミロ視点です。
  
 あっ、「さくらびと」、聞きました!!
 関さんボイス、優しげで腰砕けました(*´Д`)ハァハァ
 関さん、歌ウメェェェ!!!
 春乃サマ、教えて下さって感謝です!!
 皆様もゼヒ! さくらびと、関さんバージョンで☆
 


 それはまさに青天の霹靂。
 思ってもみなかった相手から、前振りもなく、いきなりキスをされた。
 アレがほんの冗談だったのか、それとも本気だったのか。
 当日は判断できなかった。
 ショックが先行して、考えるどころではなかったのだ。
 翌日になってからようやく、ふつふつと理不尽な出来事に対する怒りが湧いてきた。
 何しろ相手は、だいぶ年上で、しかもそれなりに遊んでましたって雰囲気ダダ漏れの男である。
 対して俺はといえば、彼女いない暦=年齢。
 しかも初恋は幼馴染の男で、この年齢になるまでずっと引きずってきた。
 無論、最初から叶う由もなく、また他から言い寄られた試しもない。
 そんな人間に、非の打ち所のない男(大悪党だった唯一の汚点を除けば)がふいにキスをしてきたとして、誰が本気と受け止めよう?
 これを好意だと錯覚できるほど、俺は愚かではないつもりだし、自惚れてもいない。
 誰かの目に映ること。そして誰かの一番になることが、どれだけ困難であるかを俺はすでに思い知っている。
 だから、キスのひとつでカノンが俺を好いているなどとは思いもしなかった。

(……カノンのせいだ。カノンがいけない。悪い噂に乗っかって、質の悪いジョークをかましやがって……!)

 突然見舞われた予想外の出来事に、俺は脳内リストリクションされたまま、とりあえずの帰巣本能で天蝎宮まで戻ってきた。
 コーヒーを飲んで落ち着こうとしたが、インスタントコーヒーの粉と紅茶の葉と間違えてむせ返り、反動でカップからこぼれた熱湯が足を直撃。
 冷水を患部にとあわてて浴室に飛び込んだが、これまたひねるコックを取り違え、蛇口ではなくシャワーから水が。
 頭からずぶ濡れになった俺は、続きに続いた不幸?の連続にもはや動く気力を失っていた。
 しばらくはタイルの上に座り込み、ボンヤリとシャワーに打たれるままになっていたが、やがて水がもったいないと気がついて開いたコックを元に戻す。
 だが、どうにか動けたのはそこまで。
 服ごと濡れたまま、日が暮れるまでそこにいた。
 何時間だったかは覚えていない。
 それほど当時は、放心状態だったのである。

「……くしゅんっ!」

 そんで、今。
 風邪を引いて寝込んでいる、というワケだ。

「くっそ~! カノンめ!!」

 風邪なんぞをこじらせたのは絶対にアイツのせいだ。
 俺は悪くない!
 コーヒーと紅茶の缶を開け間違えたのも、水道の蛇口とシャワーのコックを違えたのも、みんな、みんなカノンが悪い!

(……あんなコト、するから……)

 ベッドの中で丸まり、きつく目を閉じる。

(何も、カミュの目の前でやらかすことはなかろうが)

 どうせカミュは気に留めてやしない。
 俺に興味などないのだから。
 それでも、俺は見られたくなかったのだ。


“邪魔したな”


 カミュの無機質な声が反響し、毛布を頭から被って遮ろうとする。
 だが声は己の内側から発せられていて、耳を塞いでも散らせない。

(……きらいだ)

 俺とカノンのキスを目撃したカミュは、表情一つ変えず、横を通り過ぎていった。

(……キライだ)

 長く、紅い髪を揺らしながら。

(オマエなんか大嫌いだ)

 もう、去っていく後姿は見飽きたんだ。
 いつもお前は俺に去り行く背中しか見せない。
 だからもう、追わない。
 だから、もう……

(傷つかないと決めたではないか……!)

 なのにどうしてこんなにも息苦しいのだろう。
 熱が出ているというのに、寒くてたまらない。
 カミュを想うといつも寒くて痛くて凍えてしまう。
 キライだ。
 カミュもカノンも大嫌いだ。
 どうして俺がこんな思いをせねばならんのだ。

「ばかやろっ!! カミュのウンコたれっ!!」

 半ば八つ当たりの気持ちで声に出したそのとき、外に通じるドアからノックの音が聞こえた。
 寝室に篭っていても届くくらいだから、相当、強く叩いているだろう。
 尋ね人が誰だかはわかっている。
 昨日も来た。
 イタズラをしかけてきた張本人、カノンである。
 悪かった、機嫌を直せ、話を聞いてくれ、中に入れてくれとわめくのが聞こえる。
 軽い冗談だったのだろうが、俺には被害甚大だ。
 しばらくは拗ねたフリして無視を決め込んでやろうと思った。
 そもそも、高熱のために足元がおぼつかず、出て行くに行けない状態なのだが。
 相変わらずドアに鍵はかかっていないが、それを知らないカノンはしばらくすると諦めて帰っていった。
 また来ると言い残して。

(……しょうがないな。明日辺りは小宇宙で応対してやるか)

 ついでに風邪薬でも持ってきてもらおう。
 風邪なんか何年も引いていなかったものだから、瓶が空になっているのをすっかり忘れていた。
 薬さえあればもう少し楽になろうものを。

「うう、節々が痛てぇ」

 これからは体力を過信せずに、ちゃんと救急箱の中身を確認すべきだと少々、反省した。
 それから、無意味に水をかぶり続けないこと。
 水をかぶったら、放置して放心してないで、すぐに着替えること。
 …………って……当たり前のことだっつーの!
 子供でもあるまいに。我ながら情けない。
 やっぱりカノンのせいだ。くそぅ。俺は悪くないぞ。断じて!
 考えることはまたしてもクルリとスタートに立ち返り、同じ思考を辿って何度でも頭の中を回り続ける。
 そうしているうちにいつしか睡魔に取り込まれていった。


……………………。



“邪魔したな”


 ……って、なんのだよ。
 ああ、また夢を見ているんだな。
 振り向かない、カミュの背中を見つめながら夢の中で夢だと気がついた。


“邪魔したな”


 言うことはそれだけか。
 もういいんだ。しつこいな。


“邪魔したな”

“邪魔したな”


 だから、ウルサイ、カエレ。
 もう、お前なんかどうでもよいのだ。
 シベリアにでもどこへでも行ってしまえばいい。
 俺はもう知らない。
 いちいち、かき乱しに来ないでくれ、俺の心を。

「……邪魔するぞ」

 …………また、カミュの声が聞こえたような気がした。

「……なんだ、眠っているのか?」

 夢と現の境で、額に誰かの手の感触を感じた。

(……あ? ………なんだ、コレ? 冷たくて……気持ちがいい……)

 この冷気は、まさか……

「……カミュ?」

 そっと目を開くとぼんやりとした視界に、かつては一番親しいと思っていた友の姿が見えた。

「……な、ワケないな……」

 そう、そんなワケがないのだ。
 心身ともに弱っているから、都合の良い幻を見たに決まっている。
 だけどこんな願望が暴かれるような夢など、唯々、惨めなだけだ。
 もっと気にかけて欲しいと、優しくしてもらいたいと、願って叶わなくて、夢に見る。
 目が覚めてしまったら、もっともっと苦しくなるに違いないのに。
 目尻から涙が伝ってゆくのがわかる。
 しかし拭おうにも身体は動かなかった。


■□■


 死んでしまうのではないかと大袈裟に考えて不安と恐怖で泣いた夜があった。
 まだ5歳か6歳くらいだったと思う。
 高熱を出した俺にサガが付き添い、安心させるように穏やかに言う。

「大丈夫だよ、ミロ。お薬飲んだから、すぐに良くなる」
「ホント? おれ、しんじゃったりしない?」
「しない、しない。あと数日、良い子で大人しく寝ていたら、また皆と遊び回れる。だから、余計なことなど考えず、ゆっくりおやすみ?」

 大きな手で俺の頭を撫でるとベッドの脇に寄せていた椅子から腰を上げ、立ち去るそぶりを見せる。
 不安で仕方がなかった俺は慌てて、サガの手をつかみ、行かないでと首を振る。

「ここにいて? いやだよ、ひとりは」

 一人でいる間に死んでしまうかもしれない。
 それはさぞや寂しくて悲しいことだろう。
 独りは嫌だ。
 同じ息を引き取るにしても、誰かに見守っていて欲しい。
 結局、ただ風邪をこじらせただけたったのだが、そんな冷静でいられない子供の俺は真剣だった。
 サガはわかったと言ってまた椅子に落ち着き、俺を安心させる。
 しかし寝入ってしまうとそっと手を離して部屋を出て行ってしまったのだ。
 少年ながら当時、黄金の最年長であったサガは、アイオロスと並んで次期教皇候補とされており、そのための勉強や実務で忙殺されそうな毎日を送っていた。
だから実際のところ、俺たちガキんちょの世話ばかり焼いているわけにもいかなかったのだ。
 けれど夜中に目を覚ました俺の感じた絶望感ときたら……
 真っ暗の中にぽつんと独り。
 手をつないでいたはずのサガの姿はなく、呼んでも返事はない。
 見捨てられたんだという思いが闇と共に押し寄せてきて、言い知れぬ恐れと悲しみでパニックに陥った。
 泣きながら布団の中で丸くなり、隙間が出来ないよう、塞ぐ。
 熱くて息苦しかったが、そうしていないと今にも闇の中から死神の手が伸びてきて、連れ去られてしまいそう。
 幼児にとっては、とてつもなく恐ろしい一夜だったと思う。
 もちろん、朝なる前に眠りこけ、夜が明けて目覚める頃には布団など蹴飛ばしてどこかへやっているのだが。
 朝にはもちろん、サガが様子を見に来てくれ、俺はウソツキ呼ばわりしながら抱きついて泣きじゃくるのだ。
 それで子供だった俺の中での事件はおしまい。
 山を越え熱が下がり始めるとじっとしていられなくなり、遊びたいと騒ぎ始める。
 こうなるともう、あの夜のことはすっかり頭になくて、ケロリとしている。
 死んでしまうかもと大袈裟に、しかし真剣に考えたことも記憶のかなた。
 ずっと後になってから、たまに風邪を引いたときに思い出す程度の、そんなちょっぴり恥ずかしい思い出となった。
 けれどあの夜の、やるせない気持ちは大人になった今でも鮮明に思い出せる。
 サガを大好きだったけれど、彼は自分の親でも兄弟でも、親戚ですらない。
 血のつながりなどこれっぽっちもない、まったくの赤の他人だ。
 彼が幼い自分に良くしてくれるだけで、そこには確かな繋がりなど何もない。
 ほんの気まぐれの上に成り立っている関係は、いつ途切れるやもしれぬ糸でできた危ういものだった。
 ……と、言葉にして表現できるようになったのは、年齢を重ねてからだが、当時も漠然とそのような感じで捉えていたと思う。
 相手の心次第で、確たる絆などどこにもない、と。
 だからこそ相手を信じられず、恐怖と悲しみで恐慌状態に陥ったのだろう。
 今、こんなことを思い出すのは、久方ぶりに風邪を引いたから、というわけでなく、心理状態が似ているからだった。

「う……?」

 ふと目覚めて、ゆっくりと上半身を起こす。
 誰も座っていない椅子。
 閉じたままのカーテン。
 小さなテーブルの上の水差し。
 動きのない、淀んだ空気。
 部屋を見回して、何者の気配もないことを確かめる。

「……はっ。そうだよな。……ははっ」

 前髪をかき上げて、苦く嗤う。
 額に手の重みを感じた。
 大丈夫かと声をかけられた気がした。
 ……唇が触れたような感触があった。
 すべて。
 気がしただけ。
 何のことはない。ただ、夢を見ていたのだ。
 とても、……やるせない。
 白けた午後3時。
 音のない部屋で独り、切なくて涙した。

「…………うっく……」

 ベッドの上で片膝を抱え、そこに額を押し付ける。
 いい歳をして、みっともない。
 何がこんなにも俺を弱くさせるのか。
 弱いのはキライだ。
 強くありたい、どんなときでも。
 前を見据えていたいのだ。
 誰がいようといまいと関係なく、揺るぎない心の強さが欲しい。
 何事にも動じない、鋼鉄の心が。
 それが叶わぬなら、心を捨て去りたい。
 何も感じぬように。

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