……好きで。
好きで、好きで。
好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで、たまらなかった。
どうしようもなく、どうすることもできないくらい欲して、気が変になりそうだった。
いつも、どんなときもお前のことだけをひたすら考えた。
ヤツに会えなくなるよう、どこか遠いところへ連れ去って閉じ込めておこうか。
ヤツを見なくなるよう、その青く美しい両目をえぐりだしてやろうか。
俺から逃れられないように、両足を切り取ってやろうか。
こんなにこんなにこんなに愛しているのに、お前ときたら……!
笑顔を向けられるたびに、切なくて胸が締め付けられる。
これが、この眩しい微笑が俺のものであったなら……
だが、想像の中ですら、なかなかお前との幸せな未来を描けない。
好き勝手に嬲る映像は鮮明に描き出せても、お前と二人、許し合い求め合う姿は一向に浮かんでこない。
苦しい。
満たされたい。
お前に愛されたい。
ああ、お前に触れても良いと、俺に許可と権利を……
■□■
水瓶との関係を崩したく、眼前で強引に口付けた結果、盛大に嫌われた。
今までの努力を無に帰すくらい、それはもう盛大に。
何とか怒りをなだめようと毎日、天蠍宮まで通い詰めるものの、応じてさえもらえない。
本気で嫌われたのだと実感したとき、心がひび割れる音が聞こえ、耳に悪魔の囁く声をとらえる。
数日後。諦めかけていた許しが出た。
体調を崩して引きこもっていたと彼は言い訳のように口にする。
無論、本当の意味で許されたわけではない。
なかったことにしようと流されただけだ。
それはあんまりではないか。
なかったことに、だなんて。
俺がどのように足掻こうが、振り向いてはもらえない。
ミロにとって、カノンという男は論外なのだと通告されたに等しい。
天蠍宮に訪れたときから、もはや最後の手段に訴えるつもりでいた。
だから、中に招き入れられたとき、後ろ手でこっそりと鍵をかけた。
邪魔など入らせないと。
乱暴して、傷つけて。
本当はこんなことをしたくないのに。……などと上辺で唱えながら、一方では高潔な彼の精神を手折り、踏みにじることに酷い興奮を覚えた。
行為に及ぼうとしたときに誰かがその首筋に口付けの痕を残していたのを発見する。
……許せなかった。
使用するつもりだった避妊具は、やめた。
直接、俺のものを中に残したいと強く思った。
それが誰とも知れぬミロを抱いた男への挑戦であり、ミロへの逆恨み的復讐でもあった。
これが最初で最後の契りになろうことくらいはもちろん、理解していた。
辱めを受けて、おめおめと泣き寝入りする相手でない。
きっとその毒牙による報復を受けることになろう。
だがそれでもいい。
ただ一度きりであろうとも、この美しい金色の蠍を抱けるなら。
「ミロ……ッ! ミロ……ッ! ……っは、はっ……気持ちがイイ」
何度も夢に描いた場面を再現する。
獣欲の猛るままに好きな相手をねじ伏せ犯すのは、実に、実に。……気持ちが良かった。
「あいしてる、わかるか? なぁ? あいしているっ」
本当の愛が何たるかを知りもしないクセして、形だけ覚えた中身のない言葉を繰り返し。
伝えたいことは沢山あった。
けれど表現の仕方がわからなかった。
ただ、愛しくて苦しくて気が触れそうなこの想いを全て、注ぎ込みたい。
「俺を……俺を愛してくれ、ミロ」
相手を汚し、踏みにじりながら、受け入れて欲しいと懇願する。
叶えばいい。
けれど絶対に叶うハズのない、願い。
やがて狂気にまみれた欲望を相手の中に吐き出し、果てる。
…………結局、力でもって欲しいものを奪取するしか能のない男だ、俺は。
気づけば涙を流しているのは、傷つけられた相手ではなく、傷つけた自分の方だった。
「………………った……」
血が乾きかけた唇をわずかに動かして、虚ろな眼をしたミロが擦れた声を出す。
「……え……」
「……わかった」
独り言のような、悲鳴にも似た凶悪な祈りが……そのとき奇跡をもたらした。
「……では……そうしようか?」
歪んだ形ではあれど、それでも。
自分を哀れむばかりで他人の痛みを省みられない男の、稚拙な愛が初めて拾い上げられた瞬間だった。