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星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ
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花言葉シリーズ第5弾。6/24のデスマスクにピッタリなお花があったので食いつきました。ゲームの弟切草とは無関係です(笑)
情緒不安定で小宇宙がコントロールできず、町で破壊神になる仔ミロを仔デスがあわてて回収。
かつての自分と重ねて弟分を見守る仔デスの話。
サガさんも二人の保護者的に登場。
捏造過去、ご注意下さい!
朝方、餌をやろうと近づいたら、10匹の金魚が全て水槽の底に沈んでいた。
「うわぁ、やっちまった。まぁたミロが泣くぞ、コレ……」
前にアフロディーテがくれた鉢植えの花も1日で枯らしてしまったし、怪我をして動けなくなっていた小鳥を気まぐれに拾ってみたけど、それも回復せずに死んでしまった。
「俺ってヤツは、何でもすぐに死なせちまうなぁ」
植物も魚も鳥も……人も。
昨日、町に下りたら、小宇宙が乱れに乱れ、荒れ狂っていた。
周囲の窓という窓が独りでに割れ、ガラスの破片が降り注ぐ。
悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
破壊されるコンクリートの建築物。
所々切れた電線が火花を散らす。
古の魔物の封印でも解けたのかとその凶暴な小宇宙の発信源に駆けつけてみりゃ、何のことはない。
ウチのチビっ子6人衆の中の一人が迷子になってギャン泣きしていただけだった。
混乱に乗じ、ヤツが原因だと周囲に知られない内にヒョイと抱えあげてその場を撤退。
「あうぅ、デッぢゃぁんっ」
「デッちゃぁんじゃねーよ! 何やってんだよ、聖闘士のクセに町を大破してんじゃねー!! どこの怪獣かと思ったぜ」
「ごぇんなざぁいっ」
今年7歳になろうかというミロは、恐ろしいことに地上の平和を守る正義の聖闘士サマだ。
しかもこのオレ様と同じ、聖闘士の頂点・黄金とくらぁ。世も末ってモンだな。
オネショは未だに治らんし、気性が激しくて癇癪起こすと時々、ひきつけを起こしたりもする。
ひきつけて泡を吹いている内はまだ可愛いモンさ。
酷いときにゃあ、こうやって小宇宙を撒き散らして破壊神と化す。
同い年でもムウやアルデバランは性格が穏やかだからこんなことはない。
シャカやカミュは本当にコイツと同い年なのかと疑いたくなるような落ち着きよう。
アイオリアとミロだけだ、未だに感情コントロールが未熟で騒ぎを起こすのは。
ただしアイオリアには常に年の離れた兄がついているから、多少の問題が起こっても大事件には至らない。
しかし、コイツはほぼ野放し状態の悪魔っ子。
「一人で町に下りるなってサガに言われてただろ!?」
建物の影に隠れて抱えていたミロを下ろすとちっせぇ鼻を指で弾いてやった。
「だって……だって……にゃんこいたからカワイイしようと思って……でも逃げたから追っ掛けてたら、いつの間にか聖域じゃなくなってて……それから、えっと……親切なオジサンがお菓子くれるからおいでってゆーから、オジサンについてったら、オジサンがぱんつ交換しようってゆーから、なんかよくわかんないけど急に怖くなって逃げたら、帰り道がわかんなくなっちゃったんだよぅ」
「……ぱんつ……」
くらり、めまいがして俺は額を押さえた。
「誘拐されてんじゃねーわっ! 黄金聖闘士がっっ!!!」
俺たち黄金聖闘士は、五老峰に鎮座している老師を除き、全員が15歳以下という若さだ。
いわゆる年長組とされているのが15歳のサガと14歳のアイオロス。
俺たちの兄貴分ってヤツ。
その次がだいぶ離れて俺とシュラの10歳。
すぐ下にアフロのヤツが続いて、残り6名はなんと……そろいもそろって一桁の年齢(6、7歳)である。
なんでそんなお子様共に聖衣与えちゃうかな~って思うんだが、次の階級の白銀と俺たちじゃ天地の差があるんだよな。
それにこのミロみたいなモンスターたちをその辺に転がしておくわけにもいかない。
黄金の地位を与えて教皇シオンの目の届く範囲……十二宮にある意味、封印しているようなものだ。
「どうしよう、サガに怒られちゃうよぅ」
「……まず心配するところはソコか」
「……う………しんじゃったかな……」
「……死んでねーよ」
ケガ人は出ただろうけど。
またメソメソと泣き出しやがった。メンドクセェな、もぅっ!
「オラ、帰るぞ。サガには黙っててやっから」
俺が黙っててもこの騒ぎで気がつかないわけねーけどな。
お子ちゃまビックバンで騒ぎを起こすのは、いつも決まってコイツしかいねーんのだから。
「つーか、鼻水拭けよ」
すでにコイツ用に持ち歩いているようになっているティッシュをポケットから出して、鼻をかませる。
放っておくと鼻水すすったり、袖で拭いたりすっからな、コイツは。
……まったく。
「どうしよう、どうしよう、怪我した人にごめんなさいしてこないとかな……」
「いいんだよ、避けらんねーヤツがノロマだから悪りぃんだ」
「……やっぱ謝ってくるっ!」
駆け出そうとした小僧の襟首に指を引っ掛けて、進行を阻止した。
「お前が出て行ってゴメンナサイしても、誰も信じやしねーよ。もし、信じられたときはお前はバケモノ扱いだ。……嫌だろ?」
「…………う……」
うわ。また泣くぞ、泣くぞぉ。
一応、泣くまいと頑張ってるみたいだけど……あと何秒もつか。
ったくもぅ、嫌なタイミングで町に来ちまったモンだぜ。
「バケモノやだ……」
服を握り締めて、うつむきながらギリギリ持ちこたえている。
んー、泣き虫我慢、新記録出るか?
「だろ? だから、そいつぁ俺とお前だけの秘密にして、早いトコ、ズラかろうぜ」
「でっ、でもっ、謝んないと悪いコんなって嫌われちゃうっ」
「……知らないヤツラに嫌われても別にイイじゃん」
「んーんっ! 世界中の人たちから嫌われちゃうっ! 良いコじゃないとっ」
……それは、どーゆー基準なんだ?
お前のことなんて、誰も気にしてねーっつの。
そういうのはジイシキカジョーってんだぜ?
なーんて、言っても通じねーか、こんなチビツコに。
「俺は良い子じゃねーぜ? でも俺は別に世界中からなんて嫌われちゃいねーよ」
誰に嫌われようと、例え世界中が敵であろうと、要は自分の好きなヤツに好かれればいいだけだ。なんてこたねぇ。
「お前も俺を嫌いじゃないべ?」
「うっ、うんっ!! スキッ!!! 大スキッ!!!!」
「そ、そうか……そんなに力んで叫ばなくてもいいんだが」
ミロはちょっと扱いにくいガキだ。
明るく誰にでも懐く可愛い子だと、下々の連中には思われているようだが、これがなかなかどうしてメンドクサイ。
癇癪もちで意固地になりやすく、視野が狭くて一度思い込むと修正が難しい。
正しいか正しくないかの二択で何でも振り分けようとするから、わけがわからなくなって最終的にはドッカン☆だ。
もう少し柔軟性を身につけて欲しいモンだな。
(ま。俺みたいに嫌われ慣れてるガキもどーかと思うけどな)
俺はコイツくらいの年齢にはすでに悪いオトナのパシリだった。
盗みや詐欺、殺人くらいの悪~いコトはいくらでもやった。
子供であることを武器にして、善良なる市民を騙し、俺を飼う連中に媚びへつらっていた。
生きるために仕方なかっただとか言うことをきかないと自分がどんな目に遭わされるか知れたものじゃなかったとか……言い訳するつもりはない。
俺が弱かったのが悪いんだ。
ただそれだけよ。
(何も知らない若い女を下衆な連中が手ぐすね引いて待つ裏路地に案内したときは、さすがの俺も自身に吐き気がしたけどな……)
女の泣き叫ぶ声を聞かないように、耳をふさいでうずくまっていた、どうしようもなく惨めな弱者だった日々……。
そんな底辺生活だったが、自分に特異な能力があるとわかったときの喜びったらなかった。
今まで俺を押さえつけてきた連中を惨殺できたのだから。
悪いヤツラをやっつけたんだ。俺は悪くない。
あれは天罰だったんだぜ?
何しろ、俺は女神に仕える聖なる戦士だったんだからよ。
そうさ。自由に天罰を与える権限を俺は持っていたんだ。
それまで気づかなかっただなんて、もったいない話さ。
俺を見つけ出して、引っ張りあげてくれたサガには感謝している。
俺には……俺たちには、生殺与奪の権利が与えられているんだ。
謝る必要がどこにあろう?
「ミロ、金魚でも買って帰ろうぜ」
「……! きんぎょ!?」
顔を上げたら、たまたま魚類や爬虫類を専門にしたペットショップの看板が目に入った。
ミロの意識を逸らそうと提案したのが良かったらしい。
目をキラッキラに輝かせて、モンスターっ子は俺に抱きついてきた。
「高いのダメだぞ、一番安いのにしとけ~」
「この丸いのは? カワイイよっ」
「ピンポンパール? ……ダメ! 高いっ! コレ、コレにしとけよ。この赤いの」
店員が、俺たちに何か騒ぎがあったようだが、ケガはなかったかと余計な話を振ってきやがった。
「さーあ? 俺ら今さっき来たばかりだったから……知らなかったっスね。そんなことが向こうの通りであったなんて」
しらばっくれて答え、青ざめてうつむき、モゴモゴと口を動かしているミロの手を引いて、さっさと店から出る。
「ほら、帰るぞ」
買ったのは肉食の魚や爬虫類のエサ用として売っていたワキン10匹。
それから水槽を含む、飼育セット。
金魚をミロに持たせてやったけど、やはり表情は曇ったままだった。
「大丈夫だ。死人なんか出てない。ケガだって大したことないっ。……今日のはお前にとっていい勉強だったと思っとけ」
「……うん」
……結局、その帰り途中でストレスからミロは嘔吐してダウン。
飼育セットは聖域に入ってから雑兵に持たせ、ただの荷物と化したミロは俺が背負って帰ることになった。
「重てーなぁ。今日は厄日か? 全然イイコトなかったじゃねーかよ」
忙しいサガに買い物頼まれて出かけたっつーのに、すっかり忘れて金魚とか買ってるし……
(しかもサガに渡された金で買っちゃったし)
ミロが単体で勝手に騒ぎ起こしても一緒に帰ってきたら、俺の監督不行届きってなって、怒られんの、俺なんだよ、バカヤロウ。
まだ鼻をすすりながら、たまにしゃくり上げつつ背中で眠るガキンチョを恨めしく思いつつ、自宮に戻った。
ミロを自分のベッドに放り込み、まずはTVをつけた。
「おー、やってる、やってる」
アテネ市街で起こった謎の事件をリポーターが興奮した口調で伝えていた。
被害者の人数などを聞きながら,水槽に水とカルキ抜きとポンプを設置して、金魚を放り込む。
ケガ人24人か。死人が出なかったのは、不幸中の幸いってヤツだな。
破壊した範囲の割りに大したことなかったじゃん。
これなら何もなかったようなモンさ。ヘーキだヘーキ。
「さて。しゃーねぇ。サガに報告してくっか」
監督不行届きで俺がサガに叱られるかもしんねーけど、最終的にはサガがシオン様に大目玉なんだから、世の中ってヤツぁ不公平にできてんだよなぁ。
俺もサガも悪くないのになー。ちぇ。
心の中で愚痴り、一つ下の宮へ足を運んだ。
「……やはりそうだったか。先程、シュラを偵察に向かわせたが……先にお前が連れてきてくれて助かったぞ。事態が収束しているとわかればシュラもすぐ戻ってこよう」
おお。どうやらゲンコツ見舞われなくて済みそうだぜ。
「しかし、参ったな。コントロールできるようになるまでは、しばらくミロの力は封じた方が良いかもしれん」
サガは苦虫を噛み潰した顔で、自らの髪をくしゃりとかき混ぜた。
「そんなこたしなくても大丈夫じゃね? 死人出てねーじゃん」
「たまたまだ。一歩間違えればまた悲劇が繰り返されるところだったんだぞ」
「…………そだケド……」
本人が知ってるかどうかまでは定かじゃないが、ヤツは、とある迷宮入りした事件(事故?)の真犯人だ。
見えない力で無理やり引き千切られたような、遺体の数々。
被害者は家の住人5人と、一家とはどのような関係にあったのか不明の成人男性一人。
家具は破壊され、窓ガラスは飛び散り、まるで家の中だけにハリケーンが起こったようだと報道が告げていた。
床も天井も壁も夥しい血で彩られていたそうだ。
凄惨を極めた異様な現場は、どう考えても人間にできる範囲を超えていたため、当時は悪魔の仕業だと世の中を震撼させた。
だがそんな中、唯一の生存者がいた。
まだ4つだった末の男の子だ。
惨劇の中で男の子にだけは何故か傷一つ、ついておらず無事保護される-……
もちろん、そんな小さな子にできる芸当ではないから、疑いなどかかるハズもなく、事件は未解決。
俺が後から聞いた話はこんなトコ。
この事件についての出版物も多く出回っているし、まだそう遠い話でもないから誰の記憶にも残っているだろう。
「なんだって聖域の外になんか出たんだ。あれだけ言い聞かせていたのに!」
「……ニャーンコ追いかけて、そのまま迷子になって、不安に駆られて暴走したみたいだぜ?」
「ハァ」
力なくサガがしゃがみ込んでしまった。
まー、無理もねーか。
アレを施設から貰い受けてきたのはサガで、今も管轄はサガだもんなぁ。
ちなみにお子様で何をしでかすか怪しい俺らは、このサガとアイオロスの二派に身を任されている。
俺、シュラ、アフロ、カミュ、ミロの5名が最年長(あくまで老師を除いた)のサガに。
ムウ、アルデバラン、アイオリア、シャカの4名が次兄となるアイオロスに。
つまり俺らが何かやらかせば、み~んなサガの責任となるワケだ。
ちなみに問題児トップ2は何を隠そう、ミロとこの俺サマよ。えへんっ。
「ダメだ。ミロには首輪が必要だ」
「まぁまぁ。泣くなよ、サガ」
「泣いちゃおらんっ!」
「本人もさ、今回は相当、効いたみてーだし。自分がいかに化け物じみた存在か身にしみてわかったろ。それにアイツ……、たぶん劣等生だと思ってるから、あんま封印とかしない方がいいと思うけど?」
「……劣等生?」
「そりゃアンタ……同い年が多い中で未だに小宇宙のコントロールがヘタクソなのはアイオリアとミロだけ。しかも事件を起こすのはミロだけ。ちなみに親友のカミュは優等生。……そうときたら嫌でも目に付くだろうよ、自分の低能さってヤツがよ」
しばらく腕を組んで考え込んでいたサガはやがて言った。
「……わかった。今回はお前の判断に従おう」
「……そりゃドーモ」
「教皇には私から詫びておく。死人が出なかったのが不幸中の幸いだ、何とか穏便に済ませてくる。……後は頼んだぞ」
「へーい」
後は頼んだというのは、ミロのケアのことだろう。
面倒だがまぁ、しゃーない。
急ぎ足でサガは教皇の間を目指し、俺も自宮へ帰ろうとしたとき、偵察に行っていたシュラが戻ってきた。
「よっ。ごくろーさん」
「……デス」
俺から事情を聞いたシュラも「やっぱりか」と肩を落した。
「とりあえず俺は戻るわ。俺んトコで寝かしてあるし、ヤツが起きて暗い所に一人だとまたピーピー泣き出して巨蟹宮崩壊とか洒落になんねーからな」
「あ、ああ」
自宮に戻ってみるとミロはもう起きて金魚の水槽の前にいた。
「かーいい。なでなでしてもいいかな?」
「魚はダメだろ、触っちゃ。見るだけ」
「ふぅん」
泣き腫らして不細工になった顔でミロが頷く。
「そうそう。運よく被害者はいなかったってよ」
「! ほんと!?」
「ああ。TVで言ってたから間違いない」
「ミロもTV見る!!」
「ダメ。TVは10歳から」
「むぐぅ」
「10歳以下でTV見ると目が潰れるんだって教えたろ?」
「シャカはそれで潰れちゃったのか?!」
「……シャカは目ぇ閉じてるだけだから」
それきり、何も言わずミロはずっと水槽の前で座り続けていた。
「……金魚、明日になったらお前の宮に運んでやんよ」
「……今日、一緒に寝てい?」
「……好きにすれば?」
俺のベッドでしかも隣でオネショされると困るから、出ないと言ってもちゃんと便所には行かせた。
こんな面倒頼んでんだから、金魚と飼育セットを買った後のおつりは全額もらっておこう。
本当は頼まれた本を買ってくる予定だったが、きっとこの騒ぎでもう忘れてんだろ。サガのヤツも。
「ねぇ、デッちん」
俺の手を握ったまま、仰向けに寝ているミロが話しかけてきた。
「デッちんのおうちはなんでいっぱいの人たちがこっちを見ているの?」
「ああ、アレか」
巨蟹宮には無数の顔が張り付いている。
俺がこれまで命を奪ってきた者の末路だ。
任務の際に俺が巻き添えにした罪もない一般人も多く混ざっている。
女も老人も……今、俺の手を握っているチビと同じような子供も。
「アレは俺の強さの勲章よ」
「クンショー……?」
「俺が倒してきた敵とその戦いに巻き込まれた弱者共が、なんもできねークセに恨めしいって化けて出てきてやがるのサ」
「お化け?」
「そう。怨みで成仏できずに張り付いていやがる」
ミロは何も言わなかったが、湿気た手に力がこもるのが伝わってきた。
「……怖いのか?」
「う、ううん」
「無理すんな。今からでもサガんトコに行けばいい。すぐ下の宮だから、すぐだぞ?」
「いいっ。デッちんと寝る!」
なんでか知らないが、コイツは俺に懐く。
誰にでも懐くが、特に俺に懐いているのは明らかだ。
ひょっとしたら、同種の匂いを嗅ぎ取っているのかもしれない。
俺も……攻撃的小宇宙を制御できなかった、落ちこぼれの一人だ。
ミロのようにちょっとした精神の揺らぎで爆発することはなかったが、敵意を抱いたときに不必要なまでの攻撃的小宇宙が渦を巻いた。
この巨蟹宮の有様を見てもわかるように、無関係な人々を巻き込んだ数は恐らくNO,1だろう。
聖域に連れてこられたばかりの頃は、サガにもそれを向けてよく返り討ちにあったもんだ。
「いいか、ミロ。弱者のことなんざ、いちいち考えるな。まだお前らは任務につかされたことはないだろうが、これから先、いくらでも戦う場面はある。そこで被害者なんか気にしていたら、こっちがやられんだよ。それに余計な手間をかければかけるほど、被害は拡大していく。戦いに情けは無用。弱い奴が淘汰されんのは自然の摂理だ」
「……デッちん、やさしい」
「……あ?」
今の話を聞いてて、どこからそうなった?
俺は一瞬、ぽかんとして暗闇に慣れた目を隣のクルクル金髪に向ける。
淘汰とか摂理とか難しい言葉を使い過ぎて伝わらなかったか?
「でも心配いんないよ。俺、被害者出さないようにする。必要最低限で勝てばいいんだ。よく……わかった。なんか、できそう」
「……? ああ、そう?」
翌朝、俺が金魚の様子を見に行ったら、全滅していた。
「あ~……やべぇ。やっぱ金魚死んじゃったなぁ」
前にアフロディーテがくれた鉢植えの花も1日で枯らしてしまったし、怪我をして動けなくなっていた小鳥を気まぐれに拾ってみたけど、それも回復せずに死んでしまった。
「俺ってヤツは、何でもすぐに死なせちまうなぁ」
植物も魚も鳥も……人も。
(ミロになんて言お)
この有様を見たらまた大騒ぎするに決まっているから、起きてこない内に網ですくって生ゴミに……なんて考えていたら、
「っあーっ!!!」
ぎゃびりーん! 見つかった!!
「金魚、死んじゃったぁ」
「お、おぅ……スマン」
「あ~……なんで皆死んじゃったのかなぁ?」
「さぁ?」
……なんでだろな。
ここに連れてくると、みんな死んじまうんだ。
こうまで続くとなんかあんのかもな。
そうでなくとも生者の居心地いい場所でもなさそうだし。
生ゴミにポイしようとしたら、お墓を作ると言って聞かないので仕方なく、巨蟹宮の側面にある空きスペースに連れて行った。
「黄色い花がいっぱい……」
巨蟹宮の周囲はこの季節になるといつもこの花に彩られている。
他の草なんか生えないっていうのに、この黄色い花だけ。
しかも不思議なことに下の双児宮にも上の獅子宮にも生えていない。
「オトギリソウだ」
「キレイ!」
「そうか? あんまりイイ意味の花じゃないんだがな」
日本では、弟を切る、草。でオトギリソウというらしい。
セントジョーンズワートとはまた別種だとアフロディーテが言っていた。
一族秘伝の塗り薬の秘密をしゃべってしまった弟を兄が切り殺した血飛沫が葉について、この花の葉は黒い点がついているという伝説がある。
「どんな意味があんの?」
「……いや。忘れちまったな」
その花言葉は、“迷信、妄信、秘密、恨み、敵意”……
どれをとっても俺にピッタリじゃねーのよ。……ヘッ。
「ミロ……お前は俺みたいになんなよ?」
「なんでー? 俺、デッちんすきぃ~♪」
そのアホヅラ、曇らせる必要なんかねーんだからな。
……やがて。
成長してゆく中で金髪の小僧は、敵にさえ命の選択を問うようになる。
“降伏か、死か”
一見、サドっ気たっぷりのその技は、確かに最小限の被害で済む。
流す血も、散らす命も。
敵であれ、殺さずに済むのであればそうしたいのだろう。
甘い。甘過ぎる。
まだ15発目のアンタレスをただの一度も生き物に向けて打ったことはないという……
「……ったく。アイツらしいな」
(だけどよぅ、ミロ。生涯15発打たなかったら、今度、死ぬのはテメェだぜ?)
それも、いいのかもしれねーけどな。
空色に輝く瞳を曇らせずに済むのが、その真紅の毒針だというのなら。
お前は俺みたいになる必要なんかない。
俺は俺で、倒したヤツラの怨恨を背負って生きる。
それが俺なりのやり方ってモンだ。
「今年もまた、黄色い花が咲き乱れる季節がやってきたな」
湿気た風を感じながら、俺はつぶやいた。
小鳥を埋めた場所も金魚を埋めた場所も……今ではもう、わからない。
弟切草:迷信、妄信、秘密、恨み、敵意