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星の墓場

星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ

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黄金三角形:5(カミュ視点)

 今回はカミュ視点です。
 第7話、大変ショッキングでしたね(;´∀`)
 あまりのショックに細部が記憶から吹っ飛んでしまいました(苦笑)
 本当はこの黄金三角形も、黄金魂の結果を見てからそれを踏まえて書き出そうと思っていたのですが……。
 カミュミロ派の方々に栄養送って、元気になってもらって作品を描いていただき、私がその恩恵を受けようという下心満々で、先に書き始めてしまいました(爆)

 黄金魂は、あと6話中でムウ、シャカ、サガ、デス、老師、ロス、リア、カミュの8人が活躍したり、根っこに吸収されたりするワケで、ディーテやミロが復活を遂げるのはまさに最終回の13話くらいだろうと思われます。
 皆でユグドラシル倒して、あとはキラキラ散っていっておしまいかな?
 そんな中でカミュとミロとの和解場面を描いてくれるとも思えず、また和解したとしても、とても我々ファンの納得いくようなもって行き方をしてくれるとも思えず。
 なので、結果はすでに出ているようなものですよね(;´∀`)
 というワケで、このお話は当初の予定通り、聖戦後=黄金魂後として書き進めてもいいかなと
ちょっぴり考えて始めております。
 今のところは、そのまま黄金魂ナシ設定で書いてますが。
 そのうち、見返してその辺を手直ししたら、支部にもあげようかなぁ。
 前置き長くなりましたが、始まります~。




 目を覚ますと高い天井が見えた。
 カーテンから射す光が強過ぎて全体が白っぽく霞んで見える。
 う。眩しい……
 ええと……?
 なんだったかな?
 あー……うーん。……朝、か?
 ぼんやりした頭を何とか起動させようと置かれている状況を探ろうとする。
 やがてハッキリと輪郭を捉えだした視界に金色の髪と青い双眸のよく知った顔が飛び込んできた。

「カミュ!」

 頬にいくつもの雫が落ちては滑り落ちてゆく。
 泣き顔を見て思い出した。
 そうだ、私は死んだのだ、と。



■□■



「ようやくお目覚めか、この寝坊助が」

 氷河からの連絡を受けてミロが駆けつけてきた。
 当の氷河はキッチンへ茶を淹れに引っ込んだ。
 ……というのは建前で、恐らく本心は泣き腫らした顔を客人に見られたくなかったのだろう。
 証拠にさっきからずっとバシャバシャと水道の音が聞こえっぱなしだ。
 顔でも洗っているに違いない。
 ここに茶を持って現れるには、しばらく時間がかかりそうである。

「ああ。ずいぶんと長いこと眠っていたらしいな」
「もう、このままずっと起きないのかと思ったぞ」

 彼は肩をすくめて冗談で濁した言葉を口にする。
 ずいぶんと心配をかけてしまったようだ。

「大まかな流れは氷河から聞いた。冥王との戦いには勝利したのだな」
「うむ」
「私が最後か」

 一度、命を落とした我々を女神が救い上げて下さった。というのは、ミロが来るまでの間に涙と鼻水の洪水で汚い顔になった氷河から聞いた。

「そうだ。あとはサガたちも皆、それぞれの日常に戻っている」

 13年も前に亡くなっていたアイオロスだけは、日常が非日常のタイムトラベル状態になって困惑しているとミロが私を笑わせる。

「氷河が……ずっと私に付き添ってくれていたのだな」

 私が確認するとやや考えるようにして間を置いてから、「感謝しろよ」とミロは静かに言った。

「やはりそうだったか」
「……ああ」

 目覚めたとき、傍にいたのは氷河だった。
 寝たきりの私の看護はさぞや大変だったろう。
 あの子のことだ、夜も昼もなく無理をしていたに違いない。

「氷河にはずいぶんな苦労をかけてしまったな」
「……ほんと。お前は身勝手にすぐ死ぬから」
「別に好きで死んだわけでは……」

 心底、呆れたように両手を広げるジェスチャーを見せられて、返す言葉を失くした私は口ごもってしまう。

「どうだか。……ま、いいや。では、俺はそろそろ退散するとしよう」
「うん? もう行くのか。少し待てば氷河が茶を入れてくるというのに」
「病み上がりに無理はさせられんしな。それに師弟の感動の再会を邪魔しちゃ悪い」

 壁に背をもたれて立っていたミロは、組んでいた腕を解きドアからするりと出て行った。
 入れ違いに氷河が入ってきてキョロキョロと辺りを見回している。

「? ミロは?」
「帰ったぞ、今しがた」
「エエッ!? 早ッ! せっかく三人分のお茶を淹れてきたのに! なんで引き止めておいてくれないんです?! 一杯、余っちゃうじゃないですか」

 そんなことを言われてもな。
 だいたい、茶を淹れるのにどれだけ時間かけてるんだか。
 私は肩をすくめて、責任だと渡されたカップ二つを見つめた。



 長く床についていた私の体は硬い上に重たくなっていて(体重のことではない)、調子を取り戻すのにさらなる時間を要した。
 聖闘士といえど何ヶ月も横になったままだとこんなにも動けなくなるものなのだといらん知識が増えてしまった。
 リハビリは弟子と友人が手伝ってくれたおかげか順調で、普段の生活にはまったく不便を感じない程度には回復した。
 鈍った戦闘の勘も取り戻さねばならないとミロを相手に組み手の毎日だ。

「今日は氷河はどうした? 姿が見えんな」
「ああ、教皇からの命が下って、バケモノ退治に出かけている」

 本日の訓練を終了し、十二宮の階段を上る。

「ふぅん。そうか。……じゃあ、オトナの時間だな♪」
「うん……? あ、ふむ。そうだな。それもよい」

 友人がふざけて酒を飲む真似をするから、一瞬、何のことかと思ったがすぐに頭が追いついた。
 互いに生きての再会に祝杯をあげようというのだ。
 夜になると昼間に約束したとおり、共に食事をしながら酒と会話を楽しんだ。
 妙な言い方になるが、生前していたのと同じように。
 TV番組にケチをつけてみたり、世界情勢について論じてみたり、氷河の成長について喜びあったり。
 なんでもない時間が流れてゆく。

「ずいぶんとペースが速いようだが、大丈夫か?」
「なぁに、大したことないさ」

 久しぶりに二人で飲もうとなったせいか、ミロの杯を重ねる速度がずいぶんと上がっている気がする。
 後で気分が悪いとか言い出すのではないかと思ったが、そうなったらなったでベッドに運んで転がしておけばいい。
 せっかく楽しそうにしているのだから、水を差すのも野暮というものだろうとそれ以上は言わず、放っておいた。

「お。もうこんな時間か。……さて。んじゃ、帰ろうかな」

 深夜、日付が変わったと同時に友人は椅子からふらりと立ち上がる。

「ずいぶんと早いな。明日に任務が入っているわけではないのだろう?」

 早いといっても日付が変わっているのだから、すでにいい時間ではあるのだが、どちらかの宮で酒盛りとなれば、朝方まで続いてしまい、泊まっていくのが通例だったから珍しいと思ったのだ。

「ん~、まぁな。……なぁ、カミュ? ひとつ、聞いてもいいか?」

 曖昧に答えたミロは机に両手をついたままで、へにゃりと崩れたこれまた曖昧な笑みを浮かべて口を開く。
 なんだと応じれば、

「お前は人を好いたことはあるか?」
「……は?」

 前後のつながりもなく、唐突に飛び出した質問に私は目をしばたかせてからそっと息をつく。
 ダメだ、これは。
 完全に酔っているな?
 やはり帰さずに泊まっていくことを勧めよう。
 でないと途中で沈没しかねない。

「ミロ……、やはり今日は-……」
「ふふ、はははっ」

 冗談のつもりだったのか、ミロは頭を下げて一人笑い出した。
 癖のある金髪がさらさらとテーブルの上に流れる。

「俺はあるよ」

 顔に覆いかぶさった髪の間から、青い瞳が片方、覗いて見えた。

「……あるんだ」

 視線が合い、どう返答すればよいのかわからず困惑する私にミロはもう一度、微笑みかけた。

「さよなら」
「え。あ、ああ……ではな」

 …………?
 乱れた髪をかき上げて整えるとミロは足早に部屋を出て行く。
 やがて外へと通じるドアの閉じる音が静かに聞こえた。
 一人になった私は、急に静まり返った部屋でもう一口、赤いワインを口にした。

(……んー……?)

 何かか引っかかりはしたのだ。
 違和感は感じていた。

「ま、いいか」

 だが、深く詮索せずに意識から流してしまった。
 立ち去る言葉にいつもの「またな」ではなく、「さよなら」を選んだ彼の心情など頭の隅にもなかったのだ。





 ……あの日を境に、彼は私の元を訪ねて来なくなった。
 階段や訓練場で会えば、普段どおりに談笑をするので避けられているわけではなさそうだが。
 ただ、積極的に顔を見せに来なくなった。
 そのことに気づいたのは、私ではなく、弟子の氷河だった。

「カミュとミロは親友だと聞いたのですが、あまり一緒にいるところを見ませんね」
「ん? まぁ、子供ではないからな。そんなに年中行動を共にはしまいよ」

 答えたものの、そういえば? と改めて思い返す。
 シベリアから報告のために戻れば、快く迎えてくれ、すぐにシベリアに戻ろうとするとなんだかんだと引きとめようとする。
 月に一度の、私の身を案じた手紙は欠かさない。
 それが……
 ん、いや、待て。
 今、シベリアにいないのだから、それは当たり前か。
 ……? いや。普通……? じゃないか?

「それを言うなら、お前とていつも星矢たちといるわけでもなかろう」
「あ。まぁ、そうですね」

 などと話しているうちに、ムウの弟子がやってきた。

「氷河ァ! 星矢がベースボールやろうって下で紫龍たちと待ってるよー?」
「お。行く、行く♪ じゃあ、カミュ。ちょっと行ってきます」
「……どこでやるんだか知らんが、聖域の施設を破壊してくれるなよ」
「そんな本気出しませんよ、遊びなんだから」

 大きな戦いを終えた弟子は、10代の少年らしく、元気に駆け出していった。

「よし、行くぞ、貴鬼」
「あっ、わっ……あははっ♪ わーいっ☆」

 小脇に貴鬼を抱えあげて。
 あんな姿を見ていると自分たちの幼い頃が思い出される。
 サッカーをやれば、ボールがいつの間にか破裂してなくなり、ベースボールをやれば、棒切れバッドが折れてどこかへ飛んでゆき、通りかかった兵士が入院。
 ボールはいつの間にか消失し、建造物が崩れ………………

「……ロクなコトせんな、我等は……」

 黒歴史が芋づる式に思い出され、頭を振る。
 自分たちの幼少期を思えば、いかにアイザックと氷河が大人しくて良い子だったか。

「……しかし確かに顔を見せに来んな」

 幼少時から兄弟のように常に一緒だった。
 私がシベリアに渡るまでは。
 もっと遊びに行こうなどと誘ってくるタイプだと思ったが……。

「別に構わんけど」

 本から顔を上げ、少し考えてからまた視線を文章に向けた。
 弟子も手を離れた今、時間をもてあまし気味の私は椅子に背をもたれて読書漬けの日々を送っている。
 平和になったといっても、世界中のあちこちで一般人の与り知らぬところでは伝説の魔物の復活や人の手に余る事件が多発している。
 だが、それらは青銅、あるいは白銀が派遣されれば片付いてしまう小さな事件ばかり。
 我々黄金の出番などないに等しく、やることといえば再び聖戦が起こったときのために己を鍛えるか、新たな聖闘士の育成か。
 そうでなければ世界を股にかける城戸グループの若き総帥でもあるアテナの護衛として、ついていくくらいである。
 数時間、読書に時間を費やした私はあくびと共に大きく身体を伸ばし、「さて」と心の中でつぶやく。
 氷河が言っていたようにミロにしばらく会っていない。
 1冊を読みきったところだし、肩もこった。
たまには誘って外出するかと階段を下りる。

「ミロ。いるか?」

 天蝎宮に踏み込んで声をかけるとちょうど当人が部屋から出てくるタイミングだった。

「ん? どうした、何か用か?」
「別段、用事というわけではないのだが、」
「そうか。通りかかっただけか。ではな」

 片手をあげてミロは私より先に天蝎宮のその下へ降りていってしまった。

「…………。うむ」

 どうやら、彼の方が他に用事を抱えていたらしい。
 本当に何も用事などなかった。
 ただ、来ただけだった私は当てを失くして再び自宮に戻る。
 読み途中で放置していた本を引っ張り出して、その日は一日、読書で終わってしまった。
 まぁ、こんなときもあるだろう。
 事前に訪ねて行くと伝えていたわけでもない。
 ……最初はそう思っていた。

「酒でもどうだ?」
「へぇ、珍しいな。カミュから誘ってくるなどと」
「そう、だったか?」
「すまんな。けど、先約が入っている」
「そうか。それは残念だ」

「美術館の券を手に入れたのだが、行くか?」
「いや、俺はいい。氷河とでも行ってきたらどうだ?」

「買い物に町に出ようと思うのだが」
「そうか。楽しんでくるといい」
「…………。」

 その後もいつ訪ねても空振り。
 避けられている?
 いや、しかし、理由がわからない。
 喧嘩などしていないし、冥王の手先になって云々というのは、もはや事情も解ってもらえているハズ。
 不用意に怒らせるようなことでも口にしてしまったのだろうか?
 もし今日、スルーされたら理由を問いただしてみようと心に決めて、天蝎宮に足を運ぶ。

「ミロ、いるか?」

 ノックしようと手を上げると背後から声が近づいてきた。

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