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星の墓場

星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ

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黄金三角形:2(再) ミロ視点

掲載し直しました。
少しはマシになったかな(;^ω^)
ミロ視点です。


「お前は、警戒心の欠片もないのだな」

 笑いを収めたカノンは、空元気に疲れたように小さく、消え入るような声で呟いた。
 この態度……。
やはり、心に溜め込んでいるものがあるはずだ。
 どうにか喉につかえたものを吐き出させてやりたいが、残念なことに俺はあまり器用な方ではない。

(どうすればよい?)

 こんなときに、気の利いた一言すら思いつかない己に呆れ返りながらも、せめて会話が途切れないようにと話しかけ続けた。

「警戒心がないだと? 蠍座はいっとう、疑り深……いや、慎重なんだぞ。お前のことだって端から信用しなかったろうが」

 ドアから出て行く背中に追いすがって、隣を歩く。

「ふん。あっという間に信用してしまったではないか」
「それはお前が見合っただけの覚悟を魅せたからだ」

 発狂か死か。
 中枢神経を刺激する俺の技は、与える痛みだけで言えば他の連中の技の比ではない。
 打撃などの表面的な痛みよりも、神経系の痛みの方がより精神的なダメージが大きい。
 それはまさに蠍の毒が全身を駆け巡るような苦しみだ。
 蠍座の星の数になぞらえ、全部で15点。
 最後のアンタレスを打ち込むことで決定的な死を相手に与えることになるが、大抵の者はその前に発狂するか死ぬかのどちらかだ。
 ゆえに俺は過去にただの一度もアンタレスを打ち込んだ例がない。
 そんな中で14発まで耐えてみせたのは、キグナスの氷河とこのカノンだけだ。
 己が犯した罪を償うため、アテナの元に駆けつけたカノンは、俺のスカーレットニードルを敢えてその身に受け、気が狂いそうな痛みに耐えてみせた。
 そんな覚悟を見せられたら、俺でなくとも信用するだろう。
 俺はカノンを信じている。

(きっと……カミュよりも)

 信じたかった相手を信じられず、敵だった者を心の底から信頼しているとは。
 フ、皮肉なものよ。

「お前は一度懐に入れてしまえば、どこまでも相手を信ずるのだなぁ。俺のようなヤツでさえ」

 天秤宮を抜けたあたりでカノンは足を止めた。
 さっきまでのフラフラはどこへやら。
 足取りは割りとしっかりしている。
 熱いカモミールティーが効いたのだろうか?
 酔い覚ましにいいなどとは聞いたことはないのだが。
 降ってきそうなくらいの星空を見上げて言うから、俺もつられて振り仰ぐ。

「……そうでもないさ。肝心の、友を信じてやることができなかった」

 心が軋んで痛むのは、自分のせいだ。
 一番、信じたかった相手を信じることのできなかった己の未熟さ。
 氷河はもちろんのこと、他の青銅たちやカミュと親しくもなかったシャカやムウまでも彼らが裏切るはずがない、そこには裏があると考えたというのに、俺ときたら……
 いつもヤツが聖域に帰ってくるたびに何かを期待して。
 何もなくて落胆して。
 帰ってくるといいながら、なかなか戻ってこないアイツに苛立ちを募らせて。
 友である自分と幼い弟子二人のどちらが大事なのだ? なんて、心の中で大人気ない秤にかけて。
 長いこと離れている間に、信頼する気持ちさえ、いつしか忘れてしまっていたのだ。

(まったく……これでは本当に……)

 ただの面倒で重たい奴だ。
 放り出したくもなる……か。

「ああ……サガたちが冥王の走狗になって攻めて来たときのことか。仲間が三人がかりで殺されたのだ、無理もない」
「しかしっ」

 慰めに反論しようとする俺の頭に大きな手が被さってきて、髪をかき混ぜられた。

「信じていたからこそ、許せなかったのだろう?」
「……! それは……」

 どうなのだろう?
 カノンに言われて再び己に問うてみる。
 信じていた?
 そうか?
 いや、違う。
 信じていたのではない。
 そんなにキレイな心持ではなかった。
 俺は信じてなかった。
 信じてやれていなかったのだ。
 ただ……

(……ただ)


…………………………信じたかった。


 その気持ちだけは、違うことなく…………
 ああ。
 また胸が。
 胸の奥で軋む音がする。

(痛いよ、胸が……)

 右手で胸元の服をくしゃりと握る。

「俺はお前らしくていいと思うぞ。誰かのために怒ることができる。恥じることがどこにある」
「……くそ。お前の手はあったかいな……」

 カノンの抱えるものを吐き出させてやろうと思っていた俺の方こそが、いつの間にやら慰められているとは。
 憎たらしい。
 なんだかカッコイイな。クソ。さすがは年長。
 俺もこのくらいの余裕は欲しいものだと思う。
 再び歩き出してしばらく。
 無人の処女宮(シャカは聖戦後、インドへ戻った)を抜け、巨蟹宮の前まで来てカノンは軽く片手を挙げた。

「もう、この辺でいい」
「……しかし」
「まさか双児宮までくるつもりではなかろうな?」
「そのつもりだが? 何か問題でも?」
「……あ~……だから、お前は警戒心が足りんというのだ」

 面倒くさそうにカノンは自分の首筋あたりをかくと今来た道を指さして「帰れ」と命じた。

「よいか、ミロ。今後は夜中に会いたいなどと言ってドアの前で待ち伏せする男など、簡単に中に招き入れるなよ」
「? お前のことではないか」
「……次は、ナイと思え?」

 ずいといきなり距離を縮めてきたカノンは、鼻先がくっつきそうになるくらい顔を間近に近づけて言った。
 驚いて後ずさった俺を残し、すぐさま身を翻すと宮の中へと消えてゆく。

「…………なんだったんだ」

 付き合いが浅いせいか、元々わかりづらいヤツなのか。
 俺は腕を組んで首をかしげた。
 カノンという男の言動は、俺の理解を超えている。
 なんだか、いつも置いてきぼりの気分になる。
 けれど、俺を頼って天蝎宮まできていたのは間違いないのだ。
 できるだけのことを、してやりたい。
 こんな俺でも誰かのために役立つのなら。
 誰かの心を少しでも軽くしてやれることができるのなら。
 友を信じきれず、絆を手放してしまった俺にも何かできるものなら……

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