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星の墓場

星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ

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ブプレウルム[サガロス]

「はぁ」
「どうしたアイオロス?」

 教皇シオンが留守をしている間、年長組と呼ばれる私とアイオロスが執務代行をしていた。

「アイオリアたんがかわゆぃぃ~」

 …………。
 うわ、出た。病的ブラコン!
 聞かなければ良かった。
 秘かに後悔して嘆息。
 頼りになる相棒アイオロスには、幼い弟がいる。
 まぁ、7つも離れていればそれは可愛いだろう。
 しかし毎日、やれ絵を描いてくれただの、芸術の天才だの、やれオネショしたの、寝ながら世界地図を描くなんて大物だのと他人の私には正直どぉ~っでもいいことを延々と……。

「俺の知らないわけのわからん女を連れてきてケッコンしますとか紹介されたら俺はどういう対応すべきか、サガ!?」
「……それはずいぶんと遠い未来の話のようだが?」
 少なくとも十数年は先のことに思える。

「うおおっ! 寂しい!! 俺を置いてアイツは出て行ってしまうのだっ!! おしめ換えてあげたの、俺なのにぃっ!!」

 うはぁ、また出た。
 一日何回かは陥る、謎の被害妄想。

「……そのうちアイオリアだけでなく、歳の順からいくとデスマスクやシュラ……アフロディーテがそれぞれお嫁さんやらお婿さんになって俺たちを置いていって、次にムウとアルデバランが出て行って……」

 “たち”?
 “たち”と言ったか、今?
 私も置いていかれる側にいる設定? その脳内ストーリーだと?
 し、失敬な。
 私はこれでもモテるのだからなっ!
 ……主に子供たちに……

「カミュやらミロやらシャカがいなくなって……そして私たちしか残らなくなるんだ」
「……そうなるまでにずいぶんかかるから今から心配しなくともいい。ついでに言うと誰もお嫁さんにはなれないからそこだけは安心しろ」

 恐らく私の言葉など届いていないであろう、被害妄想癖の相棒。
 彼は突然、黙ったかと思いきや……

「そうだっ! チューしておこうっ!!」

 ブーッ!!
 思わず噴いた。
 何を言い出すかと思ったら……
 どういう思考回路を辿るとその結論に到達する!?

「な……なんなのだ、その謎の発想は?」
「彼らが大きくなってカノジョとか作ったとき、実は既にお前はファーストキス経験済みなんだぞ、やーい!って言ってやるんだ。ププーッ♪」
「……オイ、コラ……」
「赤ちゃんの頃に、おばあちゃんに初めてのキスを奪われちゃったカンジ?」
「……疑問系で私に言ってこなくていいから……」
「ふははははっ。覚悟しろ、小僧どもっ! 俺を寂しくさせるからいけないんだぞっ! 寂しんぼさんをナメるなぁっ!!」
「待て、早まるな! まだケッコンしますって報告、誰からも入ってないだろうっ!? そして寂しんぼを自慢げに言うな!!」

 カノジョとわくわくファーストキスしたと思ったら、実は赤ん坊のときにおばあちゃんに奪われ済の刑……だとうっ!?
 ななななな……なんとしょっぱい刑罰を考えるのだ、この男は!?
 しかもまだ見ず知らずの女を連れてきてもいないし、結婚の報告だってしてこないであろう、彼らに、あらかじめ罰を与えるとかどういう神経をしているんだ?!

「よっし、シオン様からの宿題、終了っ☆」

 私が慄いている間に彼は自分の分を終わらせて、悪魔の計画をいたいけな子供たちに実行すべく椅子から立ち上がった。
 あれだけアホな嘆きをさらしていたくせに、手は休むことなく課せられた仕事を完璧にこなしているから、始末が悪い。
 あまりのことに固まっていた私もトントンと書類をまとめて片づけ始める。
 この乱心男を野放しにしておくわけにはいかん。

「ブフッ……カミュあたりは汚い!とかいって泣き出しそうだな。潔癖症クサイし♪ デスは泡吹くカニ? なんつって☆」

 ホラ、もう目的がズレてきている。
 ロクなことを考えんな、まったく。

「もう、悪戯が目的になっているだろう、アイオロス。構いたくてしょうがないのはわかるが少し……」
「まず初めの犠牲者は、サガ! お前だーっ♪」

 ……へ?

 言うが早いか、アイオロスは掠めるようにして私の唇を奪うと、そのまま逃走。

「…………は…………はは…………あのヤロ……」
 私はそっと自分の口元に手を当てた。
 ほんの少し、掠っただけだというのに酷く熱を持った気がする。

「あっ、アルデバラーン♪ いーいところにっ☆」
「あ、こんにちは、アイオロ……」
「かぁいいなぁ、食べちゃいたい♪ ……むっちゅうぅぅ~vV」
「ぐわぁあぁ!?」
「デスマスク~、こっちおいで~」
「なんだよ、おっさ……ぎゃびり~ん!?」
「シュラちゃん、お兄さんがイイコトしてあげよう!」
「わあぁあ!?」
 やがて十二宮のあちこちで悲鳴が聞こえ始めた。
 変態兄さんが調子こいて、十二宮はもはや阿鼻叫喚の地獄絵図になっているであろう、可哀想に。
 しかし衝撃のあまり私はその場から動くことが出来ず固まったまま。
 よくわからない疼きがじわりと身体の奥底から湧き出てきて、徐々に髪の先から黒く染まっていくのを実感する。

「おのれ……覚えておけよ。……この代償は高くつくぞ、アイオロス……」

 お前の別の初めては、この私が貰い受けてやるからなッ!!

「ウワーッハハハハハ!!」




ブプレウルムの花言葉:初めてのキス



 
[おまけ]
「……青春だの、サガよ。ヒョッヒョッヒョッ♪」

 ふいに背後から肩を叩かれ、私は飛び上がった。

「ウワーッハハ……ハ……きょっ!? 教皇ッ!? いいいい……いつお帰りにっ!?」

 ……一気に、髪が元に戻りまちた。
 あと何とかこの妖怪ジジィの口封じをしなければ、とちょっぴり本気で考えてしまったのは内緒だ。
 
 

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