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星の墓場

星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ

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トリトマ:1[リアミロ]

まだ書き途中で、思ったより長くなってしまいました;
ムニャムニャしながら、30分未満の小刻みで書いていたので、いつもよりさらに文が酷いことになっていると思いますが、多めに見てやって下さい(>_<)。
2に続きますが、まだ出来てません(爆)



 身近な者を亡くす苦しみは十分過ぎるほど味わった。
 だから、わかる。
 最初の大きなショックが通り過ぎるとしばらくは痛みを感じられない。
 現実感がない、あるいは受け入れる準備が整っていない、さもなければ麻痺をしている。
 原因は、その中の一つかもしれないし、どれも正解かもしれない。
 ある程度、日が経ってから、本当の苦しみがやってくるのだ。
 じわり、じわりと染み入ってきて、やがて果てない悲しみと底のない寂しさが津波となって押し寄せてくる。


 此度、黒幕の自害という形で幕を下ろした内乱は、聖闘士の中核を担う白銀の多くが死滅、頂点たる黄金も半数が命を落すという、甚大な被害をもたらした。
 一週間が経ち、徐々に落ち着きを取り戻した聖域では、戦死者のための追悼式がしめやかに行われた。
 聖衣に純白のマントという正装で、生き残った黄金聖闘士……五老峰を動けない老師を抜いた5人が最前列に並ぶ。
 真の女神であらせられたサオリ様の哀悼の言葉を聞きながら、俺はそっと左手の方向に視線をずらした。
 シャカを挟んだその隣にいる、俺たちの中で今、最も傷ついているであろう、幼馴染のことが気にかかったのだ。
 多くの聖闘士や兵士たちのすすり泣く声が聞こえる中、聖衣のマスクは左手に抱え、右拳を左胸に当てた哀悼を示す姿勢で、彼はいかにも彼らしく、気丈に顔を上げて口元を引き締めている。
 教皇に成りすまして女神暗殺を企てていたのは、双子座ジェミニのサガ。
 その罪をなすりつけられていた兄アイオロスの汚名は、これで完全に晴れた。
 ムウも師の仇は自身で討てなかったものの、サガの自決により、無念は晴らされたことだろう。
 だが親友を失ったミロは……
 首謀者とその周囲を固めていた、いわゆるサガ派のデスマスク、シュラ、アフロディーテは命運を共にしたが、カミュは裏を知らなかった。
 陰謀を知らないままに師弟対決を余儀なくされ、散っていったのである。
 ……無駄死に……とは口に出来ないが……
 サガの手のひらで踊り、同士討ちの果てに命を落したのは否定しようもなく。
 そして黒幕であったサガは、ミロが兄とも慕った相手である。
 サガ失踪後……実際には、聖域に居続けたわけだが……、彼はずっとサガの帰りを待っていた。
 我が兄アイオロスが逃亡した翌日も、サガが戻ってきたらきっとアイオロスを助けてくれる、この混乱だって解決してくれるはずだと俺を勇気付けた。
 その待ち人こそが黒幕だったわけだが。
 知らずにいたミロは周囲がもう待っても無駄だ、諦めろと言っても聞く耳を持たなかった。
 サガは最強だから死ぬはずがない。
 動物園に連れて行ってくれる約束をした。
 サガは約束を破ったりはしない、と子供の頃から……実のところ、十二宮での戦いが始まるほんの直前まで。
 実に13年間。
 来る日も来る日も双児宮までサガを迎えに行き続けていた。
 頑なに信じ続けた先にあった、醜い舞台裏を知った彼の心中はいかばかりか。

「……動物園……行きそびれた……」

 聞こえるかどうかという小さな声で、サガの遺体を前に呆然と呟いていた、あの横顔が忘れられない。
 親友の死も、兄と慕った男の死も今の今という出来事なのだ、ミロには。
 カミュが遺した弟子の氷河は、いわばミロにとって仇ということになるが、無論、怒りを向けるはずもなく……
 傷ついた氷河を慰め励まし、後見人となっている。
 もともと性格上、悲しみや苦しみを表に出すようなヤツではないから、心配だ。
 自身のダメージを隠して氷河の慰め役に回るアイツが無理をしていないか、気にかかって仕方がない。
 ……いや、無理をしないはずがない。
 アイツは、明け透けに見えて実際のところ、心の底をたやすく見せたりはしない。
 あらゆることを内に秘めてしまうから、ある日突然、爆発したりする。
 間に何があったわけでもなく、成長と共に自然と距離が開いてしまった俺たちだが、今こそ、頼って欲しいと思う。


 式典が終わった後、ミロは俺とムウに労わりの言葉をかけてきた。

「長かったな、二人とも。報われたとはいえまいが……少しは溜飲も下がったろう。よく、これまで耐えてきた。あまり力になってやれなくて、すまなかったと思っている」
「ありがとう、ミロ。ですが私はもう、サガを恨んではいません。彼もきっと長い間、苦しんでいたのでしょうから……。13年間、絶え間なく続いていた罰から、彼はようやく開放されたのですね」

 差し出された手を握り返し、ムウが慈愛の滲む微笑を浮かべた。

「……そう言ってくれるとサガもきっと……いや、俺がそんな風に答えるのは変か」

 肩をすくめて苦く笑い、ミロは俺にも握手を求めてきた。

「俺ももう、いいんだ。13年も経っている。それよりお前は大丈夫なのか」
「俺? 俺は傷など負ってないが……?」
「いや、大丈夫かって傷じゃなくてだな……」

 言いかけると遅れて察したようで、頭を振った。

「ああ、そういう気遣いは無用だ。ヤツは納得して逝ったんだからな。弟子に自分の力を託して……これほど良い死に方が他にあろうか。満たされたみたいな死に顔だったしな」

 ことのほか明るい調子で言い、肩をすくめて見せた。
 それから、少し迷った素振りを見せてから再び言葉をつむぐ。

「アイオリアも……その……カシオスって子のことは……事の顛末は書類で確認したが……その子はその子なりに満足だったのではないかと思うのだ。気に病むなと言うのが無理だろうが、あまり自分を追い詰めるんじゃないぞ」
「……ありがとう」

 カシオス……カシオスか。
言われて改めて、幻朧魔皇拳に操られた俺の目を覚まさせるために起こった惨劇を思い浮かべた。
 シャイナを慕っていた15歳の少年。
 どこまでも分岐してゆく、未来が彼にもあった。
 それを俺が、俺のこの拳が……

(チクショウ……!)

 やはり、俺はムウのようにサガを許す気にはなれそうにない。
 たった15の少年が死を覚悟し、死を受け入れ、満足だったはずがない。
 身を張って慕った女性を守りきった……その一点についてのみ、満足であったかもしれないが。
 そんなことは俺を慰めようとするミロも十分承知している。
 だから歯切れが悪い。
 カミュのことは、ハッキリと良い死に方と言ったが、カシオスについてはミロもそうは思っていないのがわかる。
 つい拳を固めてうつむいた俺の目の前に指が突きつけられ、思わず目を瞬く。

「念のために言っておくが、お前の心配をしているんじゃないからな。お前がその件に関して、必要以上に己を責める様子を見せれば、オピュクスやペガサスにも気を使わせるというのだ。悲しむなとは言わん。大いに嘆くがよかろう。話ならいくらでも聞いてやる。酒にも付き合おう。ただし、十二宮を降りたらおくびにも出すな。……お前は、レオのアイオリアなのだから」
「ふ、相変わらず厳しいな、お前は」
「何を言う。逃げ道は作ってやったろうが。ふん、このミロの慈悲深さに感謝しろ?」

 憎まれ口を叩いて微かに笑ったミロは、ばさりとマントを身に引き寄せて、式典の会場となった訓練場を後にした。

「……らしいと言えばらしいが……まったく頑固な男だな、アイツは」

 アルデバランが丸太のような腕を組んだままで苦笑した。

「笑いたいときには笑い、泣きたいときには思い切り泣けばいいのだ。カッコウばかりつけてスカしておらんで。……なぁ、そうは思わんか?」
「ふふ、そうですね。アルデバランのように生きられたら、彼ももう少し楽に生きられるかもしれません。……私も、少し憧れてしまいます。貴方のような、強い方に」

 誰に向けたわけでもなく発しただろうアルデバランの言葉を拾ったムウが頷いてみせた。

「ははっ、同感だ。男はお前のようにタフでなくてはな」

 俺も拳の甲でアルデバランの胸を軽く叩いた。

「いや、そんなつもりでは……」
「おや? 照れているのかね? こんなときは、キミ流だと呵呵大笑するところでは?」

 ムウと俺が手放しで褒めるものだから、照れて頭をかくアルデバランにシャカがさらなる追い討ちをかける。
 アルデバランは恐らく、俺やムウ、そしてミロなどよりよほど頑強な男だ。
 俺のように何でも直に受け止めて、沈んでしまう男より。
 ミロのように頑なプライドで固めた重厚な鎧を着込むわけでもなく。
 ムウのように偽りの微笑で悲しみを塗り固めるわけでもなく。
 感情を誤魔化さずに表面に出す、度胸と器が彼にはある。
 ムウではないが、俺も見習いたいものだ。
 ……シャカは……
 うん、よくわからないからいいとして。
 宇宙から謎の電波を受け取る男を見習うのは難しそうだしな。
 歳を食ったら、きっと老師みたいにウン百年も生きてずっと座ってウトウトしながら過ごすに違いない。
 普通の人間である俺たちの及ぶところではないから放置しておこう。

「しかし……アルデバランが言うように、少々、心配になりますね」
「ん?」
「ミロですよ。私たちが保護者を失ったのは、幼かったからその分、道のりは厳しかったとはいえ、もう13年も前のこと。でも彼は、最も親しい者を亡くしたばかりです」
「……そうだな」
「あの様子では、他人の気遣いばかりで、自分を労わることを念頭から抜け落ちてしまっているでしょう」



■□■



 目の前に横たわる、動かし難い現実に心を砕かれるのが第一波。
 それを過ぎると夢と現の区別が曖昧になる。
 死を認識していながら、受け入れられない。
 だからどこかで相手が生きていて、そのうちひょっこり顔を出す。
 何事もなかったように、死んでいたのが冗談だったみたいに。
 今、ミロはその状態にあるのだと思う。
 俺にも覚えがあった。
 特に兄の遺体を見ていなかったから、尚更、そんな時期は長かった。
 これが過ぎた頃に次の第二波が襲ってくる。
 第一波で砕かれた心の破片が、刃物となって傷をどんどん広げていくのだ。
 待っても待っても自分の元へ戻ってこない大切な人が、もうこの世のどこにもいないのだと実感し始めたときに。


 あの日から1ヶ月近く。ミロは元気だった。
 元気過ぎるくらい元気で、むしろ気の毒に感じられるほどに。
 それでも、ふいに陰りを覗かせる瞬間はいくらでもあった。
もとからそう多くはなかった口数が極端に減り、声をかけても心ここに在らずで答えが遅れたり、的を得ない回答が増える。

「あっ!? わ、わ、そこどけ、アイオリ……アッ!!」
「うおっ!?」

 階段から足を滑らせたミロがダイブしてきたのを受け止め損ねて、互いの頭をぶつけた。
 目の前に星が散って、強烈な痛みに悶絶。

「イッテテ……気をつけろ! この間も躓いてコケてたろが! 町で回転ドアに挟まれてる姿を目撃したヤツもいるって聞いたぞ」
「げ。誰だそんな情報流したヤツは!?」

 涙を浮かべながら額をさすり、失敗を暴露されたミロは顔を赤らめた。

「……本当に大丈夫なのか?」
「たまには俺だってしでかすこともある。アイオリアだってバナナの皮を踏んでコケるくらいの芸当はするだろ」

 ナイナイ。
 そんな高度な芸当なぞできんし、したくもない。
 ……ミロは明らかに注意散漫になっていた。
 笑いながら会話をしていても、ふぅと息をつくともう意識を遠くに飛ばしてしまって、現実に足がついていない。
 しばらくそっとしておいてやるのがいいのかもしれないが、打ちのめされてフラフラになっている姿を見ると心がキリキリと痛んだ。



 こんなことがあった日からしばらく。
 ミロは自宮から降りてくることがなくなった。
 さすがに心配になって尋ねてみたが、そこに気配がない。

「……おかしいな。十二宮の誰もミロを見ていないのに」

 下に下りるには、処女宮、獅子宮……2つ跳んで金牛宮、白羊宮と未だ守護者がいる宮を通るはず。
 その誰もが近頃、彼を見かけていないという。
 処女宮の上は、無人の天秤宮。それを過ぎてようやく8番目の天蠍宮だ。
 そして……

(天蠍宮から上はもう……)

 誰も、いないのだ。
 ムウはアルデバランと。
 俺はシャカと。
 宮が続いているが、天蠍宮だけが今は孤立している。

(上にも下にも生の気配がないそこで、ただ独り、お前は何を想う?)

 居住区の扉を叩いても反応はなし。
 宮の中で呼びかけても、己の声が反響するのみ。

(やはり、いない……)

 忽然と消えた?
 いや、そんなわけはない。
 下に下りたわけでなく、自宮にいないとすれば、残るはあそこしかない。

(……宝瓶宮……)

 意を決して俺は階段を駆け上がった。
 十二宮の戦い以来、初めて天蠍宮より上に足を運ぶ。
 かつて兄が守護した人馬宮、シュラが守護した磨羯宮を通り抜けると無機質で冷たく感じる空気が守護者のいないことを強調していた。
 それから目当ての宝瓶宮……氷と水の魔術師と呼ばれた男が守護していた宮に辿り着く。
 建物を見上げ、踏み込む前に深呼吸を繰り返す。
 カミュは早くから聖域を離れて東シベリアに引っ込んでいたため、俺とは殆んど交友がない。
 感情の起伏が極端に少なく、言い回しも回りくどい。
とても判りづらい男で、何事にも明瞭を好む俺はあまり好きなタイプではなかった。
恐らく向こうにしたところで俺のような無骨者とはそりが合わないと感じていただろう。
互いになんとはなしに距離を取っていた気がする。
だからか、守護者のいなくなった宝瓶宮に立ち入るのが躊躇われた。
たぶんプライベートを覗いてしまうような気がしたのだと思う。
これから先に彼の親友としてのミロがいるから。

(俺の、幼馴染としてのミロではなく、ヤツの親友としての……そして……)

 恋人としての、ミロが独りでそこにいるはずなのだ。
 彼の面影を偲んで。
 慎重に最初の一歩を踏み込み、そっと中に呼びかけてみた。

「……いるのか?」

 無人の宮に遠慮など無用なはずだが、つい、小声になってしまう。
 ゆっくりと歩を進めていくとそこに、捜し人はいた。

「……ミッ……」

 倒れている、の、か?
 いや……そうじゃない。
 俺はすぐに理解した。
 無人になった宝瓶宮の硬い石の床に寝そべっている幼馴染。
 忘れようもない。あそこはカミュが最後にいた場所だ。
 居た、と言っていいものかどうか。
 命を落して倒れていたまさにその場所に、ミロが転がっていた。
 恐る恐る側に寄ってみるとすぐに閉じられていた瞼が開き、侵入者を確認する。

「……アイオリア」
「ミロ……大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だとも」

 ばつが悪そうに身を起こして力なく笑った。
 手を差し伸べると素直に従って立ち上がる。

「……みっともないトコ、見られたな」
「そんなことは……」

 彼は幼い頃から、他人に弱みを見せることを極端に嫌う勝ち気な性格だった。
 それは年々強くなっている気がする。
 硬い鎧で心を覆っていく様は、強いというより、この場合においてはいっそ痛々しいほどだ。
 何故そうも頑なになるのだろうか。

「お前は」

 隠された心を暴いて開放してやりたいと願うのは、俺のエゴだろうか。

「うん?」
「自分で自覚しているよりダメージを受けているんじゃないか?」
「…………そうだな。……そうかもしれない」

 しばらく黙って俺の顔を見ていたミロは視線を逸らし、聞こえるかどうかの小さな声で認めた。

「珍しく素直だな」
「カッコ悪い姿見られて、違いますってムキになる方が恥ずかしいからな」

 肩をすくめ、ミロは俺から逃げるように横をすり抜ける。

「どこへ?」
「戻る」
「……俺が邪魔したか」
「そうではない。そろそろ戻ろうと思っていたところだ」

 足音と共に距離が開いていく。
 どうすればいい?
 今、とるべき行動は?
 どうして俺は大事なときに気の利いた言葉の一つも出てこないのだ。
 このまま一人で行かせていいわけがない。
 もういない男にずっと囚われていていいわけがない。


“悪いな。アレは私のだから”


 どこからか声がした気がして、ハッとなる。
何年も前。
 すれ違っても互いに挨拶一つ交わさないカミュから、あるとき唐突に、告げられた言葉が蘇る。
 言葉少なな彼が獅子宮に現れて、ぞっとするような笑みと共に一言だけを置いて身を翻した。
 意味がわかったのは、彼と幼馴染の間にある空気が変わったのを感じた瞬間だった。
 親友から、恋人へ。
 二人は一線を越えたのだ、とぼんやり理解した。

(そうだ……あのときから……)

 距離が開いてしまったのだ。幼馴染と。
 二人の間柄を理解した俺がどこかよそよそしく接するようになって、対するミロも俺の変化から何か感じ取ったのだろう。
そうやってぎこちない関係に変化していった。


“悪いな。アレは私のだから”


 もう一度、聞こえた気がした。
 古い記憶から呼びかけられたような、この宝瓶宮のどこかにまだ奴がいて、直接言ってきたような。

(もうお前はいないのだぞ、カミュ!)

 首を振り、心の中で反論する。
 いない人間が未だ束縛していられると思うな。
 生きている者を縛り付けておけるのは…………生きた者だけだ。
 お前は弟子を選んだのだ。
 それでもアイツを縛り付けておけると思うのは、高慢だ。

「ミロ!」

 俺は大股で、先を行く幼馴染に追いすがった。
 急に大声で呼ばれた相手は目を丸くして、足を止める。

「今日は俺のところに泊まっていけ」
「なんだよ、急に?」
「お前を独りにしておけない」
「心配かけたのは悪かったが、別にそんな……」
「異論は認めん!」

 そうさ。
 気の利いた言葉じゃなくてもいいんだ。
 俺は俺の言葉で伝えればよかった。
 お前を心配していると。

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