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星の墓場

星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ

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バレンタインちっす☆

「やあ、こんばんは! 覚えているかな、諸君? 私はかつてペガサス星矢の挑発に乗って、アテナの聖衣を取り上げようと彼をコキュートスから引き上げてボコられたハーピーのバレンタインだっ」

 冥界にある自分の部屋で。
 くるりと身を翻し、姿見に指を突きつけ、私は鏡の中から私を見つめている人物(つまり私だが)に向かって言った。
 ……フ。ちょっと自虐が過ぎたかな……?
 あれから考えたのだが、わざわざアテナの聖衣を取り上げなくても、ペガサスが持っていたのだから、そのまま放置していればそれで済んだのにな。
 フフ、私ったら、ウッカリさんっ☆ まるで少女漫画のヒロインだ。
 まぁいい。次はこうはいかないぞーう。
 ペガサスの奴、メッタメタのギッタギタにしてやるからな!
 まったく、ペガサスのクセにナマイキだ。
 次……といっても、聖戦後、三界同盟が結ばれてしまったから、その機会は当分巡ってきそうにないのだが。
 ラダンマティス様に私のカッコよい勇姿をお見せしたかったが、残念だ。



 ところで話は変わるが、時は2014年。8月19日辺りにピク○ブとブログ上で、私はつながり眉毛がキュート☆なラダマンティス様にサルマキスの泉の水をウッカリ誤って飲ませてしまったのであるッ!
 決してわざとではないっ!! ついウッカリ、ドジッ子してしまっただけだから、悪気はなかったのだ。

「サルマキスとは!」

 サルマキスとは、水の精霊ナイアスの一人である。
 彼女の住む泉の水を飲んだ者は、ど、ど……同……ど……同性……に惹かれ……

「う、お、おっ!! やっぱり、そんなハレンチなことは口にできーんっ!!」

 私は髪を掻き毟ってその場に倒れこんだ。
 またしてもついうっかり冥衣を着たままやってしまったので、頭皮にいらんダメージを与えてしまった。将来ハゲなきゃいいけど……。

「ふうふう、はあはあ。落ち着け、落ち着け、私」

 それであれだ。
 もしかしてひょっとして、私にフォーリンラブしてくれないかと期待したのだが、よりにもよって、眉毛ンティス様ったら……あんなニート聖闘士にっ!!
 あんなヤツ、ジェミニなんかじゃないっ!!
 ニート座を名乗ればいいんだ!!
 無職座ニートのカノン!!
 ン、ン~。なかなか良い響きではないか。
 ところがそのニートのカノン。
 同僚のスコーピオンに惚れているというではないか。
 さらにそのスコーピオンにはアクエリアスという恋人が……。
 なかなかに複雑骨折な恋愛模様が展開されているとは思わないか、諸君?
 ……と、再び鏡に指を突きつける私。
 で、だ。
 ここは憎っくきニート座カノンと手を組もうではないかと思う。
 カノンには眉毛ン……もとい、ラダマンティス様をお可哀想だがフッてもらい、私がスコーピオンとニートの間を取り持つ……と。
 こんな作戦、どうだろう?
 ……というワケで、私は三番目の双児宮まで突破せねばならなくなった。

「フフフ。その作戦、私も一枚噛んで差し上げましょうか?」

 む!? 何ヤツ!?
 どこからともなく聞こえてくるこの声は……!?
 どこからともなくっていうか、足元から聞こえ……ハッ!?

「ウンコがしゃべってるっ!!!!」
「し、失礼なッ!! ウンコではありませんっ!! パピヨンのミュー、第一形態ですっ!!」
「第一形態でヒトの部屋に勝手に侵入するなっ!!」
「十二宮突破なら、私に任せなさい」

 私の抗議をさらりと受け流したウンコめは、そんな提案をしてきた。
 そういえば、私は十二宮に踏み込んだことがないな。
 道に迷ったら大変だ!

「よし、その提案を呑もう。代償は?」
「フ。よいのです。私は恋人に会いに行くだけですから」

 ……ウンコのクセに恋人がいるとはナマイキな。しかしものっそい羨ましいぞ。
 私もそうやってナチュラルに恋人扱いしたいものだ。
 あの眉毛がふつくしいラダマンティス様を!
 なーんて……キャッ☆ 恥ずかしーい!
 いざゆかんっ! 十二宮突破(3階まで)ツアー!!
 私はンコのミューと連れ立って、ドアを開けた。
 すると今度はフログのゼーロスが手もみしながら、立っていた。

「へへへっ。このゼーロスも連れて行ってもらえませんかね?」
「なに? お前が何故、十二宮へ?」
「いやぁ、なに。恋人に会いに行くだけですよォ~」

 な、んだと!?
 ゼーロスにまでラバーが!?
 しかも十二宮にいるとなれば、相手は黄金の内の誰かということになる……!
 ミューにしたってそうだ。
 ウンコとカエルに惚れる黄金とはどんなヤツなのだ!?
 私は戦慄した。

「ち、ちなみに……その恋人という者の名を明かしてくれはしまいか、一個と一匹よ」
「……“一匹”とは……このゼーロスのことで?」
「ああ、うん」
「………すると………“一個”はこのミューということになりますが、バレンタイン?
……それって、どういう基準の下につけた単位です?」
「いや……その……ウン……いや」

 さすがに正直に言うのは憚られたので、話題を逸らした。
 そもそもウンなアレをどう数えるのかわからないしな。

「お前たちの恋人の話を聞いてみたいと思ってな」
「なんだ、そんなことならお安い御用ですぜ。まず馴れ初めはハーデス城の中の……」
「麻呂眉がラブリーで私と同じく上品で美しく……」
「SかMかでいやぁ、完璧Mですわ。このゼーロスが踏みつけたらそれはそれは嬉しそうに……」
「似たもの同士っていうのですかね。念動力が得意で私を蝶のようにクルクルと回して……」
「あのアヒル小僧が邪魔に入らなければ、二人の世界だったんですけどねぇ~」

 ……二人の主観による恋人像を聞かされた私は、激しい違和感を抱いたが本人たちがそう思っているならまぁいいとしよう。

「毎日、会いに行っているんですよ、私は」

 そういうウンコの言葉はまぁ、信じてもいいのかもしれない。
 私が想像するにウンコの恋人とはきっとメーメーさんに違いない。
 言われてみれば、二人は気質が似ていなくもないしな。
 お目々がつぶらなミューは車 田界では一応、美形ということになっているっぽいし、そんなこともあるやもしれん。
 しかしゼーロス……お前なぁ。
 悲しい妄想はその辺にしておいた方が……
 そもそもそのお前が踏みつけて快楽を与えてやったというその人、たぶん、蠍クンの彼氏とかだから。
 映画になると肩にキャノン乗せてる変なヒトでしょ?
 ヘッドパーツしてるとカッコイイけど、取ると前髪短かったりさぁ。
 でもゼーロスの目の中がハートになっているから、わざわざ現実を突きつけなくてもよいか。
 どうせ3番目の宮にまでしか行かないし。



 そんなやりとりがありーの、私たちは徒党を組んでいざ十二宮へと向かったのである。

「三人で十二宮突破とか、あっしら、主人公みたいですな」
「……ゼーロスがもう少しマシな外見としゃべり方をしていればですけどね」

 ウカレポンチの蛙とウン○の会話である。
 しかし私に言わせれば、○ンコも蛙も五十歩百歩である。
 いくら最終形態が蝶だといっても、今現在、ただのウ○コだし……ハァ。

「無駄口はそれまでだ。白羊宮についたぞ。どうするつもりだ、ウン子よ!?」
「……よく聞こえませんでした、何ですって?」
「あ、すまん。語感が似ているから言い間違えた。ミューよ」
「…………。」
「語感、ちっとも似てませんぜ、バレンタイン様」

 しばし、ビミョーな空気が流れたが、白羊宮から人影が現れると我々はあらかじめ用意してきたパネルを立ててその後ろに隠れた。

「……何なんです、このパネルは?」
「階段の風景を写真に撮って引き伸ばしたものだ。これで周囲の風景に溶け込み、バレずに楽々進めるというワケだ」
「おおお! さすがはバレンタイン様。へへへっ。考えることが一味違いますわ」

 手もみをしながら、蛙が大絶賛。
 フッ。当然だ。しかもマジックミラーになっているから、こちらから向こうは丸見えというわけだ!!
 ……ん? あれ? 待てよ? これって麗しき眉毛ンティス様の部屋にも使えないか?!
 …………スケスケ壁の後ろに潜んでラブリー眉毛の眉毛ンティス様の生活を覗き見でき……!!
 ………………いや。いかん。それはならん。
 そんな卑怯で変態チックな真似など、このハーピーのバレンタインには……ッ!!
 …………。
 しかし護衛ということで、やっぱり視姦……じゃなかった、監視は必要な気がする。
 決してやましい気持ちではなく、あくまで真面目に護衛だぞ、護衛!
いつなんどき、暴漢が侵入してきて可憐な眉毛ンティス様にあんなコトやこんなコトをしようと企む輩がいないとも限らんのだからな!
 くぅ! なんてハレンチでアハンなヤツラだ!!
 そんなことはこのバレンタインが許さん!!
 コトに及んだ後で登場してやっつけてやる!!
 さすれば眉毛ンティス様は、ナイトのようなこの私にトキメキバキュン☆になるに相違ない。
 そして二人は……

「あっ!? ムウ様! なんかあすこおかしいですよ?!」

 白羊宮から出てきた子供が叫んで、私の未来予想図を砕いた。
 アリエス特有の麻呂眉毛!?
 そうか。さてはあれこそがアリエスのムウ!

「なんです、貴鬼。騒々しい」

 あ。続いてなんか別のが現れた。また麻呂。
 って、あっちがアリエスか。
 すると小さいのは弟子だな。

「あすこですよ、あすこ! 四角くなんか……」
「ん? おや、本当ですね。誰があんなところに」
「はて? 私にはよぅ見えんが」

 そのまた後ろからもうひと麻呂登場。
 あれはかつてハーデス様の走狗と成り下がったジジィ!
ふむ。小中大羊ファミリーというわけだな。

「シオンは老眼だからよくお見えにならないかもしれませんが、あそこになんだか……」
「これ。私は18歳の絶頂期だぞ、ムウよ。お前より2つも若いピッチピチな私に老眼言うでないわ」
「絶頂期絶頂期と毎日はしゃぐのヤメてもらえませんか。みっともない。都合が悪くなるとすぐ老人ぶるクセにぃ」
「なんだ、その棘のある言い方は。もっと年寄りを大事にせんか」
「ホラ、出ましたね!」
「ムウ様ぁ。あの四角いの、だんだん近寄ってきますよぅ?」

 先程からヤツラめ、しきりに四角い何かがあると言っているが何のことだ?
 気になった私も彼らの目線の先を追う。
 どうやら私たちのいる方向にあるらしいのだが。
 しかし背後には今しがた我々が上ってきた階段以外に何もない。
 四角い物とは一体!?


 そのときだ!


「えいっ!」

 小羊が眼前までやってきて、パネルを蹴ってきた!!
 こっ、こら、いかんぞ、よせ。

「えいっ! えいっ!! えいっ!!!」

 いい加減にしないか、小羊!!
 しかもこちらを覗こうとしてくるとは!
 私はパネルを下から持ち上げ、小羊からの執拗な目線に合わせて素早く動かし、遮った。
 右にサッ! 左にササッ!! 右右左右、上下、斜め右上ッ!!
 しばらくの間、無言での激しい攻防戦が繰り広げられる。
 ハァハァ……これが未来のアリエス! 油断ならぬしつこさだ!
 ええい! さっさと四角い物の正体でも探りに行くがいい!!

「ムウ様ぁ~! この四角いの、なんか後ろに誰かいます~」
「そんなの、見ればわかります」

 な、なに!? おかしな四角いのって、このパネルのことだったか!
 早速ばれていたとは、気がつかなかったぞ。さすがは黄金の羊一家!!
 モウロク羊意外はなかなかに鋭い。
 どうする!? やはりここは実力行使で……いやしかし、ここで騒ぎを起こしては三界同盟を私が破ることに……くっ。
 出方を考えていたら、ゼーロスが背中をつついてきた。

「バレンタイン様」
「なんだ、しゃべるな。完全にバレるだろう」
「ミュー様がもう行っちまいやしたぜ?」
「なに?!」

 見ればミューのヤツ。
 いつの間にやら、中羊の足元へ。

「あっ!? またンコだかゲロだかが……!? 貴鬼! あれほど片しておきなさいといったでしょう!?」
「エ~!? オイラ、ちゃんと毎日掃除してますよぉ。シオン様がそそうしたんじゃありませんかぁ?」
「こっ、これ、私は粗相などせんっ!!」
「我が師シオン……」
「なんだ、その目はムウ!? 決め付けるでないわっ。それより踏んではいまいな?! 踏んだのなら私に近寄るな」
「んなっ!? なんですかっ! 大人のクセにそういう……っ! 踏んでませんよっ!!」
「貴鬼、ムウがンコを踏みおったぞ! 逃っげろ~ぃ♪」
「わ~♪ ムウ様、ンコッコ~☆」
「ちっ、違いますっ!! ンコなんて踏んでませんっ!! ンコッコムウなんかでは断じてありませんからっっ!!!」
「うおっ! 追いかけてきたぞっ!! 逃げるのだ、貴鬼! ンコが移る~」
「キャーッ☆」
「うわ~んっ! 待ちなさいっ! 貴方たちっ!!!」

 よ、よし、よくやった。
 我々は羊一家が○ンコに気を取られている隙に白羊宮を突破した。

「ふぃ~。子羊の貴鬼……恐ろしい相手だった」
「微塵の容赦もありませんでしたね」

 それにしてもミューのやつ……
 毎日、会ってるって…………相手からは全く認識されていないではないか。
 そういうのをストーカーというのだぞ。
 まぁいい。次の金牛宮に行くか。
 パネルを前に進んでいくと……

「ん? お前たち、何をやっている?」

 上から野太い声が降ってきた。
 ……アレ?
 見上げればそこには、巨漢が……。
 って、マズイな。
 パネルの上から丸見え状態だ。
 というより、今気づいたことだが、階段パネルだと宮の中では風景が合わないではないか!
 これではバレても仕方ない。
 そんなところに気づいた私。なんて賢い。

「ど、どうします、バレンタイン様?」
「うろたえるな、ゼーロス。話し合いだ。平和的話し合いで解決をはかるのだ」

 パネルを放り投げると改めて金牛宮の守護者と向かい合った。

「私は冥闘士、ハーピーのバレンタイ……んっ!?」

 な、なにぃ!?
 な……なんということだ!!
 丸太のような太い腕を組み、仁王立ちする巨漢を見上げ、賢い私はまたしても気づいてしまった!!
 この金牛宮の主は……!
 主は……ッ!!

(なんとふつくしいつながり眉毛かーッッ!??)

 ハートにズドン☆
 愛の神・エロースの矢が刺さった。ぐふぅ!

「に……」
「その冥闘士が十二宮に何用だ!?」
「似ている……!」
「冥王の使者としてきたならば、それを証明する物があろう」

 金牛宮の守護者はあまりに……
 あまりに似ていた、我ら冥界が誇る三巨頭が一人!
 ワイバーンのラダマンティス様にっ!!

「証明できぬというのならば、このアルデバラン。通すわけにはいかん」

 気品に溢れたボサボサのつながり眉毛!
 目の中身のちっささ!
 白目の比率の高さ!
 おおお! この方こそ……!
 このお方こそは、眉毛ンティス様の生き別れの弟に違いない!!
 だって見るがいい! あのこの世の何にも変えがたい、ステキ眉毛を!!
 眉毛一族の証!!
 ビューティフル☆眉毛!!
 バンザイ、眉毛バンザイ!!

「……アルデバラン様!」
「む?! さ、“様”!??」
「お迎えに上がりました! さぁ、共に冥界へゆきましょうぞ! 兄上がお待ちです」

 私は麗しい眉毛の弟君の手をとった。

「アリリ? ちょ……バレンタイン様? あっしのマイハニーのところまで送ってくれる予定はどうなったんで?」

 カエルのヤツが図々しく口を挟んできた。

「今はそれどころではなかろう!? 中止だ、中止! 見てわからんのか、ラダマンティス様の弟君が見つかったのだぞ!」
「「エエッ!?」」

 カエルとアルデバラン様が同時に叫んだ。

「ラダマンティスの弟とはいかに!? ここにいる人物は俺と貴様とそこの蛙以外に見当たらないが……。そして手を握るのをやめて欲しい」

 生き別れの弟君を連れ帰れば、感動の再会……
 そして身体を張ってまで聖闘士の総本山から弟君を救い出した私にラダマンティス様からのご褒美……!!
 もしかして、ひょっとして……
 アハンでウフンな大人のご褒美………………ほっぺにチューとかもらえちゃうかもー!?
 う、お、おっ!! なんてハレンチなっ!!
 ダメだぞ、バレンタインッ!!
 そんな下心はポイしなさい、ポイッ!!
 私は決して、やましい気持ちではなく、生き別れの悲しい運命の兄弟を引き合わせるために奔走しただけなのだ。
 そう、真面目にね。真面目にっ。
 だって☆矢ワールドって兄弟率高いじゃん!?
 双子座とニート座! フェニックスとハーデス様の肉体! 暗黒ドラゴン兄弟!
 あとえーと……とにかく兄弟とか双子とかあれとかそれとか!!
 その流れで言えば絶対にこのお二方は、兄弟!!
 ムフフフフフ。
 ウフフフフフフ。

「さぁ、参りましょう、いざ、冥界へ!!」
「意味がわからんっ!!」

 おっと、手が振りほとかれてしまった。

「兄上がお待ちです、アルデバラン様。信じられないのも無理はありませんが、兄上は生きておいでです」
「俺には兄などいないぞ」
「いいえ。いますとも。確執がおありだったのかもしれませんが、三界同盟も成ったことですし、意地を張るのはおやめになって。兄上も待っております」
「何かカンチガイをしていないか?!」
「カンチガイ? いーえ?」

 してない、してない。
 だって、そのラブリーな眉毛、他で見たことありませんモン。
 ほとかれた手をまたしても両手で包み込み、手の甲にチュッチュッしたら、弟君が白目をむいて口から泡を吹き、ズズ~ンと倒れてしまった。

「おお、手の甲にちっすしただけで気を失うとは……! なんと可憐な……! 花も恥らう眉毛とはこのことよ!!」
「バレンタイン様……この名探偵ゼーロスの見立てによると、顔は青ざめていますし、全身に鳥肌立ってることですし、キモくて失神したんじゃないかと思うんですがね」

 よし、ここはいわゆるお姫様ダッコで連れて行くところだな。
 私はカエルの頭を引っぱたき、弟君の身体を持ち上げようとした。

「ヨイショ……っと」


 グキッ……


「………………。」

 あ。なんか……腰……うお……ヤバ……
 …………腰が逝った。
 思ったよりも弟君が重かった。



■□■



「……配下の者がとんだご無礼を……」
「生き別れの兄弟と思い込んでしまったのじゃから、仕方ないて」
「どこでどうそのように思い込んだのか私にもさっぱり……」
「あまり叱ってはいかんぞ」
「は、はぁ……」

 ……腰がイカレた私は、通りすがりの親切なおじいさんに発見され、弟君と共に介抱されることとなった。
 ゼーロスが伝令に走り、知らせを受けたラダマンティス様が迎えにやってきて、現在。
 老師と名乗る謎の仙人にラダマンティス様がペコペコと頭を下げる。

「よいよい。では道中、気をつけて帰るんじゃぞ。ではな」

 人の良い笑みを残し、仙人がくるりと背を向けたとき。
 私は見てしまった。
 その背中にチャックがついていることを!!
 ……気になる……
 中身、超気になる……!

「バレンタインよ」
「気にな……あっ、ハッ!」

 お叱りを覚悟して身を硬くすると、私に背を向けていたラダマンティス様が、目の前で腰を落とし、片膝をついた。

「まだ歩けまい、乗っていけ」
「ま……眉……ラダマンティス様……」

 こうして私は恐れ多くもラダマンティス様に背負われて冥界へ帰ってきたのである。

「申し訳ございません、ラダマンティス様」
「もうよい。だが二度とこのような馬鹿げた真似はするなよ。言っておくが、生き別れの弟などという設定はないのだからな」
「……は……はい」

 ううっ。なんてお優しいのだ、眉毛ンティス様!
 一生、ついて行きます!
 一生っていうか、生まれ変わっても何度でもついて行きます!!
 ついて行くって言うか、むしろ伴侶として共に歩んで生きたい!!
 伴侶として……
 伴侶……

 リンゴ~ン♪

 私の脳内で神聖な鐘が鳴り響いた。
 ギリシャ神話モチーフ漫画だけどそんなの気にせず、キリストの教会的鐘が鳴り響く。
 白くて可愛い小さな教会で、皆に祝福されながら眉毛が可憐な新妻に誓いのちっすを……
 ……新妻……
 ふ……ふふ……

「なんつって!! 恥ずかしーいっ!!!」
「うおっ!? ど、どうした、バレンタイン!?」

 思わずハレンチな想像をしてしまい、叫んで頭を抱えた私にラダマンティス様が声をかけて下さった。
 も、もしや、こ、この私めの心配を……!?
 まさか……これは……これは、告白のチャンス!?

「なんて、そんなワケあるか、ぅんもぅっ!! バカバカっ!! バレンタインのばかーんっ!!!」
「おい、こら、自分を責めるのはそれくらいにして、とりあえず、背中で暴れるのはよせっ」
「いやん、はずかちーっ!!!!!」
「コラッ、叩くな、何が恥ずかしいのだっ!? いたたっ! 痛い、痛いっ!! 馬鹿者ッ! このラダマンティスの頭を殴るとはいい度胸だ、お、おいっ!? イテッ」



 シャラララ素敵にちっす シャラララ……

 ばれんたいんでーちっす☆恋の記念日♪



「また来年っ♪」
「……誰に言っているのだ、バレンタイン?」



[おちまい]


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