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星の墓場

星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ

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黄金三角形:1

土曜日はほとんど眠って消費してしまいました(´;ω;`)
トイレと食事くらいの間しか目を開けてないに近いほど。
日曜もほぼ眠りこけていましたが、ようやく9時過ぎてのそのそ活動開始。
サササッと書いてしまったので、色々おかしい所満載なカノミロ・カミュミロをお送り致します(爆)
氷ミロの続きも一緒に書いていますが、うPできるほどは進まなかったので、また今度(;^ω^)
今回の休みは張り切っていたのになぁ。

タイトル通り、三角関係で。
三人の視点で進めるつもりです。
今回はミロサイドから。







「ミロッ……! ミロッ……」

 体の上に圧し掛かっている男が、うわ言のように繰り返し俺の名を呼び続ける。

 力負けして床に縫い付けられた俺は、大した抵抗を試みることなく、男を受け入れてしまっていた。
 自分への諦めのような、相手への哀れみのような、そんな曖昧な気持ちで相手の本気を受け取ってしまったのだ。
 けれど。と俺は思う。
 これはこれでいいのかもしれない。
 誰からも必要とされなかった俺と、すべてを失った男と。
 中々、お似合いかもしれない、と。

「俺を……俺を愛してくれ、ミロ」
「……わかった。では、そうしようか」




■□■




 約束など、交わしたことは一度もなかった。

 だから、別に恋人同士などではなかった。
 興味本位でキスをしたことはあるが、幼き日の笑ってしまう思い出の1ページに過ぎない。
 それでも馬鹿で幼稚な俺は、キスをしたら恋人同士だと結構な長い期間、思い続けていた。
 そう、一方的に。
 周囲が言うように、親友であったかどうかすら、今ではもう、よくわからない。
 幼い頃は寝ても覚めてもいつも一緒でまるで本当の兄弟のようだった。
 戦場に出るようになっても、背中を預けられるのは互いしかいなかったし、当然のように組まされていた。
 自分の相棒はアイツしかいない。
 そう思っていたのも、きっと俺だけだったのだろう。
 振り返ってみれば、ヤツがシベリア行きと聞いて涙し、別れを惜しんだのも俺だけだった。
 ヤツは弟子を育てるのが楽しみだと言い、過去は振り返らなかった。
 あの時点で俺は過去の人間になったのだ。
 酒を飲もうと誘うのも、どこかに行こうと言い出すのも、決まって俺で、手紙を書くのも俺。
 報告のため、聖域に帰還するヤツとの再会にはしゃいでいたのも自分だけだった気がする。
 性格の違いがあるにせよ、両者の間に温度差があるのは間違いなかった。
 もっと早くにこのことに気づいていれば、こんなにも傷つかなくて済んだのだろうか。
 己の価値は、女神の戦士である、その一点においてのみ有効であることに、早い段階で気づくべきだったのだ。
 他に絆など持たない。
 なくても何の問題も生じない。
 俺は、武器なのだから。
 ヤツとはただの友人でいい。
 上辺だけ取り繕っておく程度の。
 生きて再会したことを祝して杯を傾けた帰り、「これが最後だ」と密かに決めた。
 今後は積極的にかかわっていくこともないだろう。
 相手もおそらく、変化に気づくまい。
 そこまで俺を見てはいない。
 残念なことだが。
 一人で親友気取り。
 一人で恋人気取り。
 アイツにとって大事なのはもっと別の誰か。
 俺の占める範囲など小さくて狭い。
 ならばいっそ、1%もいらない。
 もう、惨めな道化は御免だ。
 俺は誇り高きアテナの聖闘士。
 決して。
 決して、二度と惨めにはなるまい。
 ……惨めになるような恋はしまい。


 酒の席を早めに切り上げて、我が天蝎宮に戻ってみれば、暗闇にまぎれて大きな獣がうずくまっていた。


「……? エート?」


 ドアの前に丸くなっているソレにそろそろと近づいて声をかけてみたら、ひざを抱えている腕に乗せていた頭が少し浮いた。

無造作に顔にかかる前髪から鋭い両眼が覗く。
 ……カノン。
 聖戦後、双児宮を守護する聖闘士となったジェミニのカノンだ。

「どうした、こんな時間に!?」


 早く切り上げてきた、といっても午前を回っている。

 季節は初夏とはいえ、半袖の練習着では寒かろう。

「まったく、何をやっているんだ、ホラ。立て」


 彼もどこかで酒を飲んできたのだろう。

 しかもだいぶ深酒だ。
 両腕を引いて立たせてやったのに、ぐにゃりとまた座り込みそうになる。

「おいおい、勘弁してくれよ」


 仕方なく脇から顔を突っ込み、体を支えてやっとこさ立たせると彼が占拠していたドアを開いた。


「気分は?」

「ん~? ……気分? サイコ~」
「そうじゃなくてっ!」

 さっきの鋭い視線は気のせいか?!

 全然、ただのユカイなヨッパライだぞ、コレ!?
 人がセンチメンタル浸っているときに、もうっ!
 空気読め、空気っ!!
 とりあえず、吐きたいカンジではなさそうでホッとした。
 どのくらいからあそこにいたのだろう。
 触れた肌が冷え切っている。
 何か温かいものを飲ませてやらねば。
 ダイニングテーブルまで連れて行き、やっとのことで椅子に座らせる。

「ったく、世話の焼ける……人んちのドアを塞いで何やってんだよ」


 まさかこの天蝎宮を双児宮と間違えました、鍵がなくて入れませんでしたとか面白おかしいこと、言いだすんじゃないだろうな?!

 羽織っていたカーディガンを脱いでカノンに渡すとヤツはソレを丸めて顔に当ててしまった。

「オイコラ。使い方が違うだろ。着ろよ! 冷たかったぞ、さっき」

「……いい匂いがする」
「は?」
「お前のいい匂いがする」

 …………。

 思わず固まって閉口。
 匂い嗅ぐな。
 そもそもその良い匂いとやらは柔軟剤か何かだぞ、たぶん。

「暖かい……」

「そらまぁ……今、脱いだばかりだからな。馬鹿なことしてないで、着てくれよ。この上、風邪まで引かれて看病とか面倒は嫌だからな」

 何で酔って帰ってきて、酔っ払いの世話をしなきゃいけないんだ。

 俺だってもう、シャワー浴びてすぐ寝たいってのに。
 ぶつぶつ文句言いながら、戸棚を開く。
 さて。
 身体を温めるにはどれがいいのかな?
 コーヒーは反って冷やすというからやめて……えーと……

「……お前に会いに来た」


 ふいに後ろから声がして振り向く。

 今度はちゃんとカーティガン袖に腕を通しているカノンが真っ直ぐにこちらを向き、もう一度言った。

「お前に会いに来た」

「…………? そうか」

 相談事? こんな夜中に?

 どこか思い詰めているように見えたので、気分を落ち着かせる効能があるというカモミールの缶を選んだ。
 先日、アフロディーテがくれたものだ。

「いなくて悪かったな。急用だったか」


 林檎に似た香りが漂うカモミールティーを二人分淹れて、自分も椅子に落ち着いた。


「いや……戻ってくると思わなかった」


 自分の方に押しやられたティーカップを持ち上げてカノンがよくわからないことを言う。


「思わなかったのに、待っていたのか、変なヤツ」

「……帰ってきたら」

 言葉を切ってカノンはティーカップの中を見つめた。

 それから、また謎かけのような言葉を残す。

「もし……、もしそれでも、帰ってきたら。きっと、俺にも運が向くと思ったのだ」

「…………意味がわからん」
「……わからんか」
「わからん」

 カノンはティーカップから俺に視線を移し、それからまだ熱いであろう茶をあっという間に飲み干した。


「邪魔したな」

「えっ!? おい、何か話があったのではなかったのか?!」

 もう帰るそぶりを見せ、テーブルに両手をついて立ち上がりかけるカノンに俺の方が驚いてしまう。

 なのにしらっと、「……そんなことを言ったか」ときたものだ。

「だって……会いにきたと」

「ああ。会いにきた。顔を見れたし、茶までいただいた。……十分だ。これ以上、長居すると……まぁ、アレだ。うん…………帰る」

 ………………。

 言ってることが、ぜんっぜん、理解できん。
 さすがはヨッパライ。
 平気なのかあんなんで?
 双児宮まで遠いぞ。
 どうすべきか考えて、俺はすでに最初から出ている答えに深々とため息をついた。

「送っていこう」

「なぜ?」
「貴様が危なっかしいからだろうがっ!」

 ナゼ? じゃない、ナゼ? じゃ!!

 ヨッパライの困ったところは、自分は大丈夫だと思っているところだ。
 さっきのグニャグニャ具合といい、どこからどう見ても平気じゃない。
 このまま帰したら、どこで行き倒れるかわかったものではない。

「その辺で寝られて風邪引いたら、どーせ、面倒見るの俺になんだろがっ!」

「ふむ。誰も俺の面倒なんぞ見たがらないだろうから、お鉢が回るのはお前だろうな」
「わかってるなら……」
「お前が看病してくれるつもりなら、風邪も悪くない」
「オイ……」

 軽く睨んでやるとカノンはプッと小さく噴き出し、何がおかしいのか、そのあと、豪快に笑い出した。

 意味もなく笑われるのは、なんっか小ばかにされているようで面白くない。


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