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星の墓場

星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ

その日は強い風だった。

お久しぶりです。カレンダー通りの私はGWラスト日となりました。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
大系行ったけど、あまり戦利品にありつけませんでした(>_<)。
パラ銀に期待です。(`・ω・´)ゞ ビシッ!!

5/3日の晩の強風をネタに妄想膨らませて、即興で短編一つ書いてみました。
カノミロで雨宿りならぬ風宿りしているだけのお話ですが。




 その日はまっすぐに歩けないほどの強風だった。
 時空の歪みが発生しているという報告を受け、ミロと二人で調査に出かけた帰りのことだ。
 時空に関与できる力を持った聖闘士は唯一、この俺だけ。
 だから派遣された。

「結局、何もなかったな」
「ああ、しかし少し奇妙な感じは残っていたな、磁場に。今後も引き続き監視が必要かもしれん」

 隣に足並みをそろえている蠍座の聖闘士は時空関連に明るくないが、俺のお目付け役としてつけられたのだろう。
 アテナに許しを戴き、正式な聖闘士として迎え入れられた今でも聖域全体からの疑惑の目が向けられなくなったわけではない。
 当然だ。
 俺はかつて世界を破滅に導いた男なのだから。
 そんな俺を聖闘士の一人として認めてくれたのがこの蠍座のミロであり、アテナが彼を同行させたのは「お目付け役」というのがただの表向きであることを俺に教えてくれていた。
 周囲の気持ちを納めつつ、俺の心情にまで気を配って下さるとは。
 アテナの温情には痛み入るばかりである。

「しっかしとんでもない風だな」
「どこか岩の陰に避難するか」

 乾いた渓谷を歩いていたが、もう限界だ。
 両脇にそびえる切り立った崖のせいで風が一段と強く、砂や小石が視界を阻む。
 調査は済んだ。帰りが遅くとも問題あるまい。
 腕でかばいながら、顔を巡らせるとちょうどよい崖のくぼみをみつけた。

「あそこだ、ミロ」
「岩もあるし風除けにはもってこいだな」

 ようやく避難して一息つく。

「……座れば? せっかく風除けしているのに岩より顔が上に出てちゃ意味がないだろう」

 腕を組んで佇んでいた俺をミロが促す。

「あ、ああ」

 ちょっとした壁の窪みと大岩があるだけの狭い空間で、まだあまり知らない相手と二人きりというのがどうにも落ち着かなかったのだ。
 しかし促されてそのままというのもおかしい。

(そもそも、そんなことを気にすること自体が俺らしくないな)

 自分は自分、他人は他人。だったのだから。
 相手がこの男だから気になるのだろう。……きっと。

「草木も生えぬ不毛の乾いた大地にただ風だけが吹き抜ける……」
「ん?」

 俺があぐらをかいて座ると両膝を抱え、そこに細い顎を乗せていたミロが低くつぶやいた。

「なーんだか嫌になる風だなって思って、サ」

 尋ねると闇を睨むようにしていたミロは、さっきとは打って変わった調子の明るい声で返してきた。

「まぁ、な」

 言わんとしていることは共有できた。
 奇妙に心をざわつかせる風だ。
 それきり、どちらともなく口を閉ざしてしまった。
 崖の上では森の木々がざあざあと激しく音を立てている。
 それに比べれば今いる渓谷は酷く静かだ。
 意味もなくじっと闇に目を凝らしているとふいにありもしない浮力を感じて、身体が傾く。
 足元が急に失われた感覚に襲われ、地面に意識を向けた途端、前から迫り来る闇が膨張して俺を飲み込……

「うおっ?!」

 思わず小さく口から出ただけの声にミロが大きく反応した。

「どうした、大丈夫か?!」
「いや、その、何でもない」
「……そうか。急に叫ぶから何事かと」
「すまん。少し、ぼんやりしていて……な」

 何だったのだ、今のは。
 闇を見てそこから在りもしない妄想を膨らませて怯えるなどと……子供のすることだ。
 暗くて細かい表情までは互いにわからないのは、この場合、気休めになる。

「そういえば……」

 少々気恥ずかしくなり、話題を転じようとしたとき、手の上にもう一つの手が添えられた。
 息を飲み込んで隣を見たが相手は相変わらず外に顔を向けたままだ。

「……不安を煽るような風だな」

 ぽつりと漏らされた言葉は、風に巻かれて散ってゆく。
 なんと返せばよいかわからず沈黙していたら、乗せられていた手がゆるりと離れていくのを感じた。
 何を恐れたのか。俺はあわてて逃げてゆくぬくもりを追い、相手の手を逆に握り締める。
 驚いたのだろう、相手がこちらを振り向く気配があった。
 だが、ふりほとかれることもなく、夜が明けるまでずっとそのまま手をつなぎあっていた。
 ……いい歳をした男が二人で。



■□■



 朝方、ふと目を覚ますと左肩に重みがあった。
 そこには俺の肩によりかかって眠るミロの顔が。



 風は、止んでいた。




 

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