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星矢再熱。腐です。逃げて! もはや脳内病気の残念賞。お友達募集中(∀`*ゞ)エヘヘ
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むっかし~むっかし~ウラシマは~♪
助けた亀に連れられて~♪
竜宮城に行ってみれば~……
「老人になっちゃったの!? なんでっ!? なんで!?」
「……なんでって言われても……そういう話なんだから、聞かれても困るよ」
日本人とのハーフである弟弟子から、あるとき外国の昔話を聞いた。
いじめられていた海亀を助けた心優しい若者が、老人になってしまうという手酷い時間の呪いをかけられてしまう、救いようのない物語だ。
この物語を聞いたのは、ずいぶん昔のこと。
弟弟子がやってきてからしばらく経ち、馴染んできた頃だった。
眠れない夜は、互いの故郷に伝わる民話などを交代で話し合った。
いつまでも起きていると師に叱られるので、ベッドにもぐりながらヒソヒソ声で話すのだ。
そんな中で特に印象に残ったのが、このウラシマタローという悲しい男の話である。
どうしてその話が引っかかったのか。
きっと自分がそのウラシマタローと同じ運命を辿ることを暗示していたからに違いない。
海に眠る母親の亡骸に会いに行こうとした弟弟子が溺れ、助けようとした俺だったが、弟弟子を陸へ返すのが精一杯で自分を救うことは出来なかった。
凍てつく水の中、薄らぐ意識の中で見たものは……
(……クラーケン?)
「まだ泣いているのか、アレは?」
「仕方ないでショ、子供なんだから」
「だからガキは嫌なんだ、ガキは! なんだって最後の海将軍があんな子供なんだ!?」
「イライラしないで下さいよ、シードラゴンのダンナ」
……まただ。
また少し開けたドアの隙間からこっちの様子を伺っている。
どうしよう。
超コワイ。
アイツラ、一見、人間みたいな姿をしているけど、その正体は魚介の類であることを俺は知っている。
証拠に名前がシードラゴンとかシーホースとかタツノオトシゴ的だ。
他にもマーメイドやセイレーン、クリュサオルとか海にちなんだ名前の連中もいる。
ウラシマタローでいうところの、恐ろしいラスボス“オトヒメ”はマーメイドかなって思ったけど、どうも位がそんなに高くなさそうだから、オトヒメではなさそう。
あとはスキュラとかリュムナデスとか……よくわからないけど、きっと魚の名前に違いない。
左目に負った怪我を手当てしてくれ、衰弱していた俺を助けてくれたのは感謝するけれど、このままだと、タマテバコとかいう時間を封じた箱を与えられ、俺は13歳の若さでおじいちゃんになってしまうのだっ!!
そんなのは嫌だ!!
俺がこうしている間にも地上の時間はどんどん過ぎているはずだ。
なんとかしないと!
氷河はもうとっくに大人になってしまっているかもしれない。
カミュなんかきっと結婚して子供とかいて……
その子達を聖闘士にするべく、今度は氷河が師となりカミュの子供を教えているかも?!
いや、それどころか二人は既に中年になっているかも?!
いやいや、老人かも!?
ああ……彼らが生きているうちに会いたい。
せめてカミュが老衰する前になんとか……
(……カミュが…老衰……)
↓
↓
↓
「わがひカミュよ。しっかりしてくだしゃれ~」
「ひょうがよ、入れ歯が外れておるぞい」
「わしもしばらくしたら逝きますんで、あいじゃっくに宜しくお伝え下され~」
「うむ。そうじゃの。わしのカツラはお前に託そう、ひょぉが。……あいじゃっく……今逝くぞぃ」
………………。
「わぁあぁあ!! カミュ~!!! 逝かないでぇ~!!!」
我が師の安らかな、それでいて寂しそうなシワクチャの死に顔を想像したら、またしても涙が止まらなくなった。
「……あー……また泣き出した。ハァ。あんなんで使い物になるのか?! おい、セイレーン。貴様、一番歳が近いだろう。何とか泣き止ませろ」
「歳が近いのは、テティスですが?」
「私の15歳は皆さんの15歳と違うんです」
「どう違うんだ?」
「内緒です。ナイショ。いいから、ソレント様、行ってきて下さいよ」
「ではこの笛で黙らせてきます」
「それじゃ永遠の沈黙になるだろが」
「ソレントを誰か殴って黙らせろ」
「了解」
ボカッ☆ ……どさっ。
俺が恩師の最期を看取っていたら、ドアの向こうで何かが倒れる音がした。
だがそんなことは今の俺にはどうでも良かった。
我が師が逝った後、弟弟子の氷河が悲しみのあまり、体調を崩してしまったのだ!!(想像では)
↓
↓
↓
「おじいちゃん!! 氷河おじいちゃん!!」
「お父さん!」
「我が師・氷河!!」
「おお、お前たち。わしのことはもぅええ。あとを宜しく頼むぞ。向こうで我が師カムとあいじゃっくが手を振っておるわい」
「おじーちゃーん!!!」
「ああっ!! 流れ星がっ!!」
氷河は長年連れ添った奥さん、4人の息子・娘夫婦、そして8人の孫と弟子たちが見守る中、その生涯を閉じた…………。
「ひ……」
「ひょおおぉおぉがあぁあぁ!!!!」
氷河よ。あっち側に俺はいません。
だから逝かないでくれぇえぇえ!!!
「なーんかまた叫びだしたな。ノイローゼか?」
「……ホームシックだろ」
相次いで家族とも呼べる二人を老衰で失った俺は、もう地上に帰るところがないのだと悟った。
俺は地上に帰っても、13歳にしておじいちゃんだ。
(いや、タマテバコさえ開けなければ大丈夫か? ウラシマタローの二の舞になってたまるか!)
カツラはたぶん、氷河の長男が受け継いでいると思うし、アクエリアス聖衣、キグナス聖衣も弟子や孫が継いでいる。
となれば、俺の居場所などどこにもない。
もう腹をくくってここでオサカナさんたちと暮らしてゆこう!
俺は涙を拭いてベッドから這い出した。
せめて自分が人であったことを忘れまいと一歩、また一歩と両足を踏みしめてドアを開く。
「皆さん! 俺、決めました!! 俺……もう地上に帰るだなんて言わない。ここで一緒に生きてくよ!!」
俺が宣言するとドアの前に集まっていたタツノオトシゴやら何やら海の仲間たちがどよめいた。
「なんだか泣いていた割りにアッサリだったな」
「フッ、地上との決別のために必要な時間だったのかもしれんな」
リーダー格の男が片手を上げると途端に場が静まる。
「ここに最後の海将軍、クラーケンが誕生した。これで七将軍がそろったわけだ」
肩に大きな手を乗せられ、俺は思った。
そういえばこの人、どう見てもリーダー格だし、強そうだし明らかに他より年上だし、何より偉そうだし…………ラスボスっぽい。
そうだ。
きっとこの人が……
「オトヒメさま?」
「……ハ?」
「アンタ、“オトヒメ”だろう?! 絶対そうだっ!! 俺にはわかるっ!!」
コイツが……!
なんか丸太みたいな腕と分厚い胸板してるけど!
見上げるような大男だけど!
いや、オトヒメは海のプリンセスだから、アレは筋肉隆々の胸板に見せかけてオッパ……ゲフゲフ……か!
見上げるような大女と言い換えねばなるまい!
ていうか、氷河がオトヒメは美人って言っていたけど、まったくもってどこからどう見てもムキムキ男にしか見えないよ、助けて!
「……オトヒメ? なんだそれは?」
「ラスボスはオトヒメって決まっているんだ! くそぅ、罠にハメたな!! ばかばかばかっ!! うわーんっ!!!」
「な……?! ナゼまた泣く!? コ、コラ、叩くなっ!! 痛いぞ、オイッ! 小僧っ!!」
「うーわー、シードラゴンがなーかした~♪ コ~ドモをな~かしたっ♪」
「ウルサイぞ、リュムナデス! おい、誰かこの小僧を何とかしろっ!!」
■□■
………………。
……結局あれだ。
氷河もカミュも歳なんて喰ってなくて、海底神殿はリューグージョーではなく、シードラゴンはやっぱり見たまんま男で、オトヒメじゃなくて。
ラスボスはポセイドン様で……
「お前は……お前はまさか……!」
「フッ……この顔を見忘れたか、氷河」
……カンチガイでうっかり海闘士になっちゃいました。
とは言えずに氷河と戦うことになったので、とりあえずそれらしい台詞とか言ってみました。
でもカノンがオトヒメじゃなくて本当に良かったと心底思う俺でした。
(おしまい)